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建築日誌
■旧加藤家住宅■    2004年12月28日

暮れも近づいて、案の定忙しくなってきた。まあ、例年通りである。設計屋にとっては、盆暮れは書き入れ時である。まことにありがたいことである。(笑)

旧加藤家住宅。素晴らしいフォルムである。対称のようで、対称でない。実に機能的である。何もコルビジェに言われなくとも、日本の民家は昔から機能主義を通してきた。当たり前のことである。小生は、機能主義は大嫌いだが、実用的建築は機能主義でなければならない。と、こう、最終判断を下している。「実用的建築」(?)これを話し出せば、きっと朝までかかるであろう。……(笑)

世田谷区喜多見に「次太夫堀公園」という、人気のスポットがある。次太夫堀についてはまた今度言及する。「旧加藤家住宅」は、この公園内に移築されている。江戸時代後期に建てられたものだ。先月中ごろに訪れたものである。
四間取型といわれ、部屋、勝手、奥、広間の4つが正方形に並んでいる。いわゆる、田の字型である。この様式は、江戸初期ころから見られるという。かなり古い。(「民族建築大辞典」:小生のバイブルである)
しかし、外観上はとても正方形には見えない。土間があるからだ。土間は炊事場のことで、タタキとも言う。今でいう、コンクリート金ゴテ仕上の部屋である。民家には、必ず土間がある。田舎の小生の家にも、長屋ではあるが土間があった。本物の土床である。「ステキ!」なんて声が聞こえてきそうだが、蟻もわくし、ゲジゲジも出るし、とても寒い。機能主義とは、そういうものである。
右側の下屋は、後に増築された味噌部屋である。味噌を蓄えるための部屋があるなんて、今日の価値観で考えれば贅沢すぎる。始めは、馬小屋として使っていたらしいが、いまでは、藍染の設備が設置されている。
特筆すべきことは、屋根の頂上にある「気抜き窓」である。今で言う排気用トップライト。これは、明治期に養蚕用に改修されたものである。養蚕のための建築は説明しなければならない内容が山ほどある。が、今日はこれだけ。
朝までに、仕事の目処を立てなければならないので。……


旧加藤家住宅 
旧加藤家住宅・外観1

旧加藤家住宅
外観2

繭玉の見られる室内 
繭玉の見られる室内