Isidora’s Page
建築日誌
■旧第五十九銀行本店■    2005年03月21日

現青森銀行記念館
竣工明治37年(1904)。
堀江佐吉の集大成とも言うべき大傑作である。
弘前に佐吉あり! 文句なしの擬洋風。(笑)

昭和18年に、県内の5行が合併し「青森銀行」が創立。
その後弘前支店として使用されていたが、昭和40年、弘前銀行支店新築のため建物を90度回転し、さらに50mばかり移動して本建物の保存がなされた。
歴史的建築物の保存に関して、社会的にもほとんど関心がなかった当時、市民の保存運動と同銀行の決断力にはまったく感服する。進んでいる。先進都市である。いや~、青森を侮ってはいけない。(笑)
佐吉の地元でのヒーロー振りが十二分に伝わってくる。
ちなみに、国指定の重要文化財に指定されたのは遅れて昭和47年。まあ、国のやることはいつだって後付なのである。

正面には、ペントハウスを兼ねたドーマーウインドウがある。変な形である。独創的である。これを、エキゾチックと言うのだろうか?
1Fの窓と2Fの窓は、それぞれ違ったぺディメントで飾られている。ルネッサンスである。胴蛇腹もスマートで、なかなかいいバランスだ。
外壁は、ちょっと見では下見板張りに見えるが、実は「張り瓦」工法である。下地板の上に素焼きの瓦を張り詰め、さらに漆喰で塗り重ねたもの。なんと、防火構造になっているという訳だ。
上げ下げになっている窓も、何の変哲のない窓のように見えるが、実は漆喰塗りの防火戸で閉じられるように工夫されている。防火二重窓。実に堅牢な建物である。

写真ではよく分からないが、屋根は寄棟造りの瓦葺である。
特筆すべきは、この屋根先端に取り付けられているバラストレード(手すり)。
これがあることで、屋根は陸屋根(ろくやね・平坦な屋根)に見える。どうだろう? 見えないか? いや、やっぱり見える。
陸屋根は、今でも雪国ではなかなかお目にかかれない屋根形式である。当時は、見る者みなぶったまげたにちがいない。(笑)
しかもこのバラストレード、実際に雪止めの効果も発しているのだ。
デザインと機能の融合。
いやはや、佐吉は弘前のミケランジェロとでも言うべきか。


旧第五十九銀行本店左アングル 
外観左アングル

旧第五十九銀行本店右アングル  
同右アングル

堀江佐吉肖像 
堀江佐吉肖像