Isidora’s Page
建築日誌
■国立代々木競技場・第一体育館★追悼丹下健三-2■  2005年03月14日

「一旦、プールしておく。」
こんな言葉を、小さなときには良く使った。
小さいときだから、良く意味もわからずに使っていたかもしれない。
「プール」という響きが、なんとなく幼い小生の心を揺さぶったのだろう。
いずれにしても、今ではこんな使い方はあまりされない。
いや、どうだろう? 
とにかく、自分ではもう何十年と使っていない。

さて、「国立代々木競技場・第一体育館」である。(唐突ですみません)
または「国立屋内総合競技場」とも呼ばれている。
設計は、いわずと知れた丹下健三。
追悼特集のつもりでちょいと出掛けてみた。もう、だいぶ日が経つ。

昭和39年(1964)竣工。SRC・RC造・S吊構造。施工は清水建設・大林組。
構造は坪井善勝、設備は井上宇市。
丹下の名前を世界に知らしめた作品である(悲しいかな、構造と設備はいつも裏方扱い)
東京オリンピックのために建設されたのは周知の通り。
18ヶ月という、恐るべき突貫工事で建設された。名実ともに、綱渡り工事である。

この建物への想いは「東京カテドラル」の項でも触れた。
小生に限らず、建築を目指すものはすべからく丹下に憧れた。(すべからくの誤用有り?)
とにかく、人知を超えたフォルムなのである。
サーリネン先生も真っ青。2本の高張力鋼ワイヤーロープによるサスペンション構造が緊張感を増している。
これだけ大規模なものは、他に例を見ない。
国家の威信を掛けたプロジェクトであった。(と、なんだか「プロジェクトX」みたいな口調になる)

このワイヤーロープ、いわばこの建物の命綱であるが、見た目は案外とか細い。
緊張感! 巨大なトコブシの貝殻を2本の荒縄で吊っている。
まさに綱渡り的恐怖感覚!
当時、競技に参加した選手は十字を切って中へ入ったという。(嘘です)

先日見た時は、バスケットボールの大会があった。
あれ? ここは確かプールではなかったか?
記憶があやふやになってきた。
「代々木のオリンピックプール」
確かにこの建物はそう呼ばれていた。いや、嘘ではない。断言する。
教科書にも、中で選手が泳いでいる写真が載っていた。
夢ではない。でも、前はアイススケート場でもあったような。……

と、白々しい思わせぶりはやめるとする。(笑)
当初から、夏はプール、冬はアイススケートとしての機能を有していた。
また、プールの上に床を張って、柔道でもバスケでも何でもできるようになっている。
最近では「光ゲンジ」(V6だったか?)などのコンサートも行われたようだ。
変幻自在の建築機能。これぞ、縁の下の力持ち、設備設計のおかげである。

でも、プールに戻すには一体どれだけの費用がかかるのだろうか?
いざという時に「経費をプールしておこう!」
なんて、お後がよろしいようで。……(笑)


2本のか細い命綱 
2本のか細い命綱

緊張感あふれる内観  
緊張感あふれる内観

流線型の外観 
流線型の外観

ついつい登ってみたくなる、綱渡りアングル
ついつい登ってみたくなる、綱渡りアングル

ピン構造の高張力ワイヤーロープ見上げ
ピン構造の高張力ワイヤーロープ見上げ

ワイヤーロープ・アンカー部
ワイヤーロープ・アンカー部(注:ここを壊せば、この建物は崩れます