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建築日誌
■青淵文庫(澁澤資料館)■    2005年05月29日

北区西ヶ原(飛鳥山公園内)。大正14年(1925)竣工。
設計:田辺淳吉、施工:清水組(現清水建設)。
RC造+レンガ造併用、2F建て。

傑作である。アール・デコである。
いや、アール・デコの先駆けである。
ウィーン・ゼセッションの面影もある。
質素な中にも、きらりと光るものがある。
デコだろうと、ゼセッションだろうと、言い方はどうでもいい。
美しいものは美しいと形容するしか他にない!

と、かなり小生的には点数が高いです。(笑)

かの澁澤榮一の傘寿の祝いと男爵から子爵への昇格を祝って、竜門社から贈られた建物である。
さすが澁澤家である。
人に与えるものも大きい分、人から頂くものも相当に大きい。
王子の飛鳥山。(王子といっても、監禁事件の王子ではありません)
かつては、別宅、曖依村荘があり、母屋のほか数棟の建築群があったと伝えられる。
残念ながら、現在ではこの建物と「晩香廬」の2棟だけしか残っていない。しかし、この2棟だけでも残ったとことは、建築界にとっては記念すべき出来事なのだ。

青淵とは、榮一の号である。
もともと大工の棟梁でしかなかった清水喜助を、近代的な請負業者(現在では5大ゼネコンのひとつ)にまで成長させた榮一の役割は大い。
やっぱり、パトロンは金持ちに限るということだ。
設計者の田辺淳吉は、帝大建築科明治36年に卒業している。
卒業後、清水組に就職。
まあ、澁澤家と清水建設とは、そういう仲だと言う訳だ。……

一見質素で、目立たない建築物である。
しかし、近づいて細部を見るとおったまげる!
きらきらと光沢を見せる陶板タイル。(まるでゼフィルスのよう)
色とりどりに彩られたステンドグラス。
そのコンビネーションが、彫りの深い真っ白な月出石の目地と対比して、浮き上がって見える。
上品な妖しさとは、まさにこのことを言うのだろう。
「過ぎ去ったあとの、ほのかな残り香」そんな貴婦人の典雅を備えた傑作である。

外壁の月出石とは、伊豆天城産の白色安山岩のことである。
よく見ないと、コンクリートの地肌と間違われるほど滑らかである。
残念ながら、内部の撮影が出来ないのでお伝えすることが出来ないが、みどころは豊富にある。
むしろ、美しいものは内部に隠れているといっても過言ではない。


青淵文庫(澁澤資料館) 
公園側からの外観


デコ調デザインのUP  
デコ調デザインのUP


裏側のR壁 
裏側のR壁