Isidora’s Page
建築日誌
■山手聖公会教会■    2005年06月07日

「美しい放浪の女性よ、わたしはまたしてもきみの近くにいる。きみは、足場が青白いヴェールに包まれたサン・ジャックの塔を通って……」

おお、アンドレ・ブルトンよ! おお「狂気の愛」よ!

って、それにしても、あまり美しくない訳文ですが、似ています。横浜「手公会教会堂」。
ブルトンが、痙攣的狂喜をおぼえた、あの足場の掛かった「サン・ジャックの塔」に。……(笑)

昭和6年(1931)竣工。
設計者はJ.H.モーガン。
RC造、地下1F、地上1F。
モーガンは、横浜に多くの名建築を残す巨匠である。

先日、横浜に行ってきた。
3/4以上は遊びだったが、とにかく仕事のついでに行ってきた。
今年の初めに火事があったらしく、内部は全焼だということである。残念である。まったく残念である。
でも、仕方がない。
建築は、常に火災の危険性をはらんでいるものだ。
「金閣寺」のようなドラマがあったのかどうか知らないが、とにかく火災は恐ろしい。
気を付けなくてはならない。

火災がなければ、外観はロマネスクに近い。
重々しいフォルムだが、足場が掛かると雰囲気はがらりと変わるのである。
見た目よりも軽くなる。足場のパイプが現代的な装飾に見えなくもない。シーザー・ぺリよりもスマートである。
不本意ではあるが、これはこれで美しいのだ。
建築とは、完成されたものだけが美しいわけではない。
火事ではなく、ただの改修工事であればよかったのだが、まあ仕方がない。
複雑な感覚は否めないが、そんな感慨にふけってしまった。

【所在地】 神奈川県横浜市中区山手町234 グーグルマップ

山手聖公会教会 
外観その1
山手聖公会教会  
外観その2
山手聖公会教会 
外観その3