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建築日誌
■エリスマン邸■    2005年07月02日

設計者は、アントニン・レイモンド。
日本では「現代建築の父」とまで崇められた巨匠である。
竣工は大正15年(1926)。
マンション建設の憂き目を見て、昭和57年に解体され、平成に入ってから現在の位置に再現された。
横浜元町公園内きっての目玉物件である。

レイモンドの事務所は今でも健在で(もちろん、レイモンドさんはおりませんが)、なかなか堅実な仕事をこなしている。
それは、レイモンドの「建築5原則」というものがあって、「単純」「経済的」「直截」「正直」「自然」をその根本理念としているからである。(と、思われる)
現在の作品では、必ずしもこの5原則に則ったものばかりとは言えないが、建築家にとって理念を掲げるということは、まさに生死にかかわる重要事項なのである。
政治家の選挙公約とはわけが違う。
余りにもお利口さん的発言だと顰蹙を買うし、かといって、挑発的な爆弾発言でも相手にされない。
安全圏としては、そこそこ環境に配慮した、人に優しい、みんなのための、いやぁ~、ね~、あの~、その~と、これでは政治家の公約となんら変わりがない。(笑)

でもって、エリスマン邸である。
小生はレイモンドの5原則には賛同できない。
いや、現代建築の父に楯突こうと言う訳ではないが、この5原則はうそ臭いし、現代ではこれを貫いたのでは世間のニーズに答えられないわけだ。
建築家はしょせん茶坊主である。どうしたって茶坊主の哲学では世界は変わらない。
茶坊主は茶坊主らしく……と、酔っているわけではないのですが、どうも話がくどくなって来た。軌道修正!

屋根はスレート葺き。1Fはタテ羽目板張り、2Fは下見板。その他よろい戸、ドーマー、上げ下げ窓といったお決まりのアイテムは装備しているものの、全体的には華美にならないように配慮されている。ベランダの手摺も実に経済的なディテールである。
さすがである。理念を貫いている。巨匠である。
仮にその辺に建っていたとしても、目を向ける人は多くないであろう。それも狙いの一つである。
レイモンドは、ライトが帝国ホテルを建てるときに助手としてついてきた人物である。しかし、師匠との理念上の隔たりは否めない。
いえね、どちらがどうだって言っている訳ではないのですが、建築の世界では、弟子が師匠と同じ哲学を持つとは限らないのです。いや、むしろ……と、今日はどうも話がくどい。
この辺で終わりとします。

エリスマン邸サンルーム側の外観 
サンルーム側の外観

玄関方向を向いて斜めアングル  
玄関方向を向いて斜めアングル

暖炉の煙突  
暖炉の煙突

食堂兼居間  
食堂兼居間

サンルーム
サンルーム

浴室 
浴室