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建築日誌
■新宿御苑(旧御休所)■    2005年07月29日

誰かが設計したのであろうが、誰だか分からない。
いや、むしろ建築は一人の人間だけが設計したと思ったら大間違いで、多数の無名戦士から成り立っている。
有名建築家の名前を冠している建物ほど、それは顕著である。
と、なにやら辛らつな枕から始まる。

ここ、新宿御苑の旧御休所も、まさにそれに当てはまる建築である。
設計者不詳。施工者不詳。竣工年代も明治38年(1905)以前。と不確かなことが多い。
最近になって調査が行われ、設計は宮内省内匠寮。竣工は明治29年(1896)と、データにはある。
平成11~13年にかけて、大幅な保存改修が行われたようだ。

建物の用途は、皇族方のスポーツクラブハウスである。
が、そんなことはどうでもいい。
このデザイン、見事な和洋折衷である。
パンフレットを見れば、「1860年代から1890年代にアメリカの住宅建築を中心に流行したスティック・スタイルを基調とした現在では希少な洋風木造建築である。」という説明がある。
スティック・スタイル! いい響きである。
スティック・スタイルとは一種のハーフティンバーで、柱や梁や筋違いの隙間をプラスターなどで埋め、視覚的に木造の骨組みをそのまま表した、線的構成を基調としたデザインのこと。

この旧御休所が、そのままスティック・スタイルかと言えばそうではなく、それを「基調とした」という説明をお忘れなく。(笑)
要するに、専門家は何でもかんでも分類したがる癖がある。
特に、様式的な分類が大好きで、ちょっとでも似ていれば無理やりそれに当てはめる。
様式に当てはまらないものは無価値だとでも言うように、多少外れていても構わない。
旧御休所のようなデザインが、本当にアメリカで流行ったとしたら面白いだろうなぁ~。端的に言うと、歯飾りのついた和風である。
でも、かっこいい!
文句を言っているようだが、小生はこういうデザインが大好きなのである。

新宿御苑(旧御休所)和風のテイストが強い妻面 
和風のテイストが強い妻面

これぞスティック・スタイル""  
これぞスティック・スタイル

玄関庇見上げ
玄関庇見上げ