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建築日誌
■新宿御苑(大木戸門)■    2005年08月01日

竣工は昭和2年(1927)、あるいは昭和4年という資料もある。
設計者・施工者不詳、木造平屋建て。

前掲の「旧御休所」が皇族の御休所であるとするならば、こちらはヴァガボンド族の御休所。しかも現役である。(笑)
何度でも言うが、建物は現役で使われてこそ価値がある。
「保存しましたよ」と言って、後生大事に密閉してしまうよりは、こうしてヴァガボンド族に利用していただいたほうが、よりメンテナンスが行き渡る。
これぞ、有機的建築!
そう言えば、どことなくライトのデザインを髣髴とさせるではないか。(笑)

小ぶりではあるが、実にきめ細かなディテールが光っている。
設計者不詳。ああ、いい響きだ!
これだけの名建築を残しておきながら、名前を残さないとは全くイキである。
管轄から言って宮内省の関係者であると思われるが、誰かご存知のお方があればご教示願いたい。

屋根の上の換気用ドーマーはご愛嬌として、左右の開口部に施された非対称の庇には驚嘆する。
特に右側のキャンチレバーはほりが深く、ライトの水平性を意識しているに違いない。
開口部廻りを、荒削りのちょうな模様を残した栗材(勝手に想像しています)でフレーミングするなど、かなりセンスはいい。
庇を支える方杖(ほうづえ)もメリハリが利いていて、有機的に構成されている。
圧巻は、窓の腰部分。
大判の市松(いちまつ)模様のスクラッチタイルが象嵌されている。
上弦はやや湾曲して、しかも、45度に傾斜。
いやー、手が込んでいる。
まったく施工者泣かせである。
「失敗しては叱られる」と、担当者はきっと「いちまつ」の不安をおぼえたに違いない。(笑)

中をのぞくと、パイプ椅子やバリケードなどの備品が置かれてあった。
事務所として、このままでも立派に使用できる建物である。

新宿御苑(大木戸門) 
有機的活用性を生かした外観

窓のディテール  
窓のディテール

市松模様のスクラッチタイル
市松模様のスクラッチタイル