Isidora’s Page
建築日誌
■旧東京医学校本館■    2005年08月22日

今日は暑かった。死ぬほど暑かった。
夏休みが一日も取れなかったので、夕方の打合せの前に、久しぶりに早起きして出かけてみた。
でも、後悔している。失敗である。
体の一部が溶けてしまって、夕方の打合せは惨憺たるものだった。(笑)

それで、出掛けた先は小石川植物園である。
山に行けなかったので、少しでも植物に接しようととっさに思いついた。
もちろん、お目当ての建築もあるはずである。

小石川植物園には初めて出掛けたが、しょっぱなから面白いことがあった。
なんと、切符売り場がないのだ。
奥まった受付には人がいるようだが、入り口に売り場がない。
よくよく見ると、向かいのタバコ屋で切符を売っていると言う。なぜだろう?
ここは東大の付属施設だから国立のはずだと思うが、切符だけはタバコ屋で売っている。
「民間に出来ることは、民間にやらせる。」
そうか! ここはとうの昔から、改革の最先端を行っていたのだろうか?

暑さの中をぜいぜいしながら歩くと、程なく目的の建物が見えてきた。
これだ! これである。
感動の余り「暑さも忘れた」と言いたいところだが、暑さは感動など物ともしない。(笑)

竣工は明治9年(1876)、かなり古い。木造2F建。
何度となく移築され、昭和44年に現在の地に落ち着いたという。
設計は工部省営繕課、西郷元善。
移築のたびに、改修・改築が行われた模様である。
基壇部が白で、上部が朱色。竣工当時は、全面が白亜の殿堂であったという。

擬洋風である。典型的な擬洋風。
寄棟の瓦屋根には、日本的な千鳥破風が二つある。
聳える「とがり屋根」の小塔は、かつては時計塔だったようだ。
ルネサンスを意識した開口部のディテールではあるが、せり出した車寄せの手摺には、純日本風な擬宝珠が付いている。
柱や欄間のディテールは唐草を扱った透かし彫りである。
小口を見せた化粧垂木など、まるで「京の五条の橋の上」みたいなデザインである。(笑)

しかし、鑑賞者に与えるインパクトは、純粋な洋風建築に比べてはるかに強い。
擬洋風はこうでなくてはいけない。
竣工当時の写真は、今よりももっともっとインパクトが強かった。

中には客がほとんどいなかったが、面白い展示をやっていた。
その模様は、改めてアップする。


旧東京医学校本館 
外観

車寄せ部分のディテール  
車寄せ部分のディテール

とがり屋根
とがり屋根(当時はもっと高く、かつ、時計が付いていた)