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建築日誌
■旧前川國男邸■    2005年08月31日

ご存知、前川國男邸である。

江戸東京たてもの園。平成5年、江戸東京博物館の分館として、都立小金井公園内に設立される。
比較的新しい。
新しいが、古い建物で一杯である。
江戸時代から昭和初期の建築まで、文化的価値の高い名建築を保存・展示している。
まあ、明治村とまではいかないが、お子さんを連れて、散歩がてらに出掛けるにはちょうど良い野外博物館である。

目玉は鬼太郎の家。(うそ)
いや、この前川國男邸などはかなり人気が高い。(笑)
小生は学生時代、この前川國男邸の設計図を模写したことがある。
ミド同人の中田先生が持ってきた課題だと記憶している。
昭和17年(1942)竣工。木造2階建て、建築面積111.55平米、延べ面積110.56平米。
設計者は、もちろん前川國男事務所である。

戦時中、木造100平米以上の住宅が法律で禁止されていた時代のことである。(建築資材の使用制限)
法基準を、10.56平米も超えて建設されたこの建物は、あらゆる解説書の中で「非常に困難な状況の中で建てられている」と、褒め称えている。まるで武勇伝。
でも、平たく言えば、ただの違法建築なのである。(笑)
2階のロフト部分などが、おそらく後工事であったと推測される。

前川國男については、いまさら説明するまでもない。
良い男である。
コルビュジェの弟子である。
ただし、実際には弟子として2年間しか働いていない。
石の上にも3年というが、早熟な天才は2年も働けばで充分なのであろう。……

くだくだ説明しようと思ったが、面倒なのでやめた。まだ、そんな歳でもない。(笑)
しかし見事な建築である。
どちらも違法建築ではあるが、鬼太郎の家と比べたら月とスッポンである。
もともとは、品川の大崎に建設されたものだ。

平面プランは、居間(サロン)を中心に、左側に「寝室・バストイレ・台所」ブロック。
右側に「書斎・便所・女中部屋」ブロックを組み合わせた、いたってシンプルなつくり。
バストイレは、女中さんには不慣れなせいか、個別に便所を設置したという。
これは、書斎用と兼用である。

旧前川國男邸 
旧前川國男邸・外観

玄関上部の木製サッシュ  
玄関上部の木製サッシュ

居間のメインサッシュ
居間のメインサッシュ

ロフト部分
ロフト部分

バストイレ内観
バストイレ内観

 便所
便所

☆犬畜家さんより場所は「大崎」ではなく、「目黒」。二階も「後工事」ではないのではないかとのご指摘をいただきました。
 場所については、現在の「上大崎」。上が抜けておりました。失礼いたしました。最寄り駅は目黒です。
 「後工事」については私にはわかりませんので、〈新築当初の申請用の図面の2階の室名は「製図室」となっている。このへんにポイントがありそうである。〉とのご指摘があったことのみ記しておきます。(石堂藍・2010/11/30)