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建築日誌
■丸二商店■    2005年09月10日

看板建築Part2。

竣工年は昭和初期。
平成10年、江戸東京たてもの園に復元。
もとは、神田神保町にあった。
荒物屋。こちらは偽りのない、木造2階建てである。(笑)

まるでセセッションである。
これならば、ウイーンの街頭にあってもおかしくない。
ジャポニズムなウイーンの貴婦人方は、そろってブラボーと叫ぶだろう。
えっ! ブラボー?(オーストリアは何語?)
まあ、なんと言うのかは知らないが、とにかく驚嘆するに違いない。(笑)

もともと角地に建っていたのかどうか知らないが、ファサードは2面ある。
コーナーに設けられたミナレットが3本。
独特の形状のパラペットが2面。
お見事! 実にすばらしい! まったくすばらしい!!

ファサードに張られた銅板は、上村邸のような立体感がない。
これは、上村邸が下地に木のくり型を使っているのに対して、こちらは蛇腹以外にそれがないからである。
しかし、この銅板の貼りパターンが傑出しており、よく見ると5通りのパターンに貼り分けられている。
しかもその文様は、江戸小紋のパターンであるらしい。
「亀甲」「杉綾目」「青海波」「網代」「一文字」と、まるで緊縛の縛り手を思わせる。
いや失礼! 江戸伝来のデザインパッチワークを思わせる。(笑)
これじゃあ、ヨーロッパ人が喜ばないわけがない。

側面外壁は押し縁下見板張りで、これは和風長屋の代表的な構造である。
外壁防火規制ができるまでは、住宅といえばこの荘厳な意匠が当たり前だった。
必要なところだけに、必要なだけの装飾を施す。
いやー、建築の原点がここにあります。

ちなみに昨今は荒物屋を知らない人がいる。
荒物屋とは金物屋・雑貨屋のことである。
円朝の落語に「怪談牡丹灯篭」がある。
ここでは出入りの伴蔵が、幽霊から百両もらって新三郎の家のお札を剥がす。
これを軍資金として開いた店が荒物屋である。
荒物は、ものが腐らないのは便利だが、値は安いし嵩も増す。
かさが増したからといって、錆付くので雨漏りはご法度である。(笑)

丸二商店セセッション風なファサード 
丸二商店セセッション風なファサード

パターン張り拡大
パターン張り拡大

側面外壁
側面外壁