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建築日誌
■清風亭■    2005年12月3日

深谷へ行った本当の理由をまだ話していなかった。
改めて言うが、わざわざネギを食べに行った訳ではない。(笑)
では、恋人に会うためにでも行ったのか?
そう、その通り。
実は、引越しした「元カノ」に会いに行ったのである。
しかも元カノは二人もいる。
「清風亭」と「誠之堂」。
二人とも、まだまだ美人で通っている。(笑)

やや老け顔の「誠之堂」は後回しにして、まずはちょっと若い方の「清風亭」を取り上げてみたい。
「清風亭」も「誠之堂」も、つい最近まで世田谷にあった。
深谷へ移築保存されたのは平成11年(1999)のことである。
この年は、小生が大阪から帰ってきた年でもある。
小生と入れ違いに、二人は世田谷から逃げていったのだ。(笑)
♪ 追いかけて、埼玉ぁ~(桜田淳子です)

大正15年(1926)竣工。
設計は西村好時。
施工は清水組。
鉄筋コンクリート造、平屋建て。
現在は、澁澤榮一ゆかりの深谷市大寄公民館敷地内にある。

「清風亭」は、澁澤榮一のあとを継ぐ、第一銀行二代目頭取・佐々木勇之助翁の古希を記念して建てられたものである。
設計者の西村好時(にしむら よしとき)は、曽禰中條事務所、清水組(田辺淳吉の片腕として働いた)を経て第一銀行の建築課長となった人物。
銀行建築の鬼の異名を持つ。(ウソ)

この「清風亭」は、佐々木勇之助翁の人柄に似せ、すこぶる清楚なつくりである。(と、一応二代目頭取を持ち上げる)
屋根はスパニッシュな丸瓦葺で、5連アーチの吹き放しのベランダが特徴的である。

両妻には、3連ボウ・ウインドウが設けられ、アーチ型の窓枠はステンド・グラスで飾られている。
また、コリント風のキャピタルを持った付柱が実にかっこいい!
これは、葡萄の葉と実をモチーフにしているのだ。(笑)

何といっても、アーチ全体を縁取っているスクラッチタイルの使い方が非常に上手い。
ところどころ段違いになった役物を使用するなど、設計者の遊び心にはまったく感服する。

内観は質素で、特に際立ったデコレイションは行われていない。
しかし、両妻の3連アーチ窓から射す光は左右とも色合いを変え、光の効果を上手く利用している。
天才的な演出である!
ライトアップばかりに頼る大建築家先生たちに、ぜひとも見習っていただきたい省エネ建築である。(笑)

清風亭 
清風亭・全景

3連ボウ・ウインドウ
3連ボウ・ウインドウ

拡大 
拡大

内部(その1)
内部(その1)

 内部(その2)
内部(その2)

ポーチ
ポーチ