Isidora’s Page
建築日誌
■ドーリック■   2006年01月7日

先日、とあるお嬢さんから変な質問をされた。

お嬢:「あのう?」
小生:「なに?」
お嬢:「あのう、Yさんが穴に埋めてしまいたい建築って何ですか?」

ドキッ!
こっ、このお嬢さんは、小生の失敗作を聴き出したいのだろうか?

小生:「えっ、え~」
お嬢:「だから~、どんなバカ建築が好きですかぁ~」

そっ、そうか~、このお嬢さんは有名バカ建築を小生に聞いているのだな。
そうと悟った小生は、ほっと胸をなで下ろして、こう答えた。

小生:「そんなの、沢山あるさ。すぐに100以上は上げられる!」

――と、豪語はしたものの、物忘れがひどい小生には100なんてとても上げられない。(笑)
で、とっさに頭に浮かんだのがこの建物、ドーリック!
物忘れがひどい小生でも、この建物だけは忘れなかった。(笑)
天才的建築家として知られ、ポスト・モダニズムのパイオニア、水先案内人であり、鬼面人を驚かす式の隈研吾大先生が御設計なさった、バブル期の金字塔! である。
どうだい!
一度見たら絶対忘れられないだろう!!(笑)

ドーリック。
平成3年(1991)竣工。
設計は隈研吾先生。
どう見たって、堅固(研吾にかけてます)には見えないです。(笑)

コンセプトは「都市の虚構性を暴きだす」建築だとのこと。
先生、どうぞ暴き出してください。
さあ、何もかも暴き出してください!
と、土下座をしてお願いしたくなる。

角地にあり、建物の角を丸くするのは良くある手法だが、この建物は並ではない。
なんと、ドリス式の柱をドーンと立ててしまったのだ。
先生は同じ年にイオニア式の柱もおっ立てている。
暴き足りないのだ!
もっともっと、暴きたいのだ!(笑)

実はこの柱、1922年に「シカゴ・トリビューン設計競技」というものがあって、アドルフ・ロースが「見事」に落選した案をパクったものなのだ。(笑)
もちろん、先生も知っている。
もちろん、みんなも知っている。
だから、逆説的にこれを採用したという。
理由というのは、そういうことなのだ。(笑)

と、ついつい熱くなってしまいますが、これはこれでいいのである。
お客様と、世間様が喜んでいるのなら、小生がどうこう言う筋合いはない。……
でも、まてよ?
ん? なんかいい感じがしてきたぞ!
そうだな、なんだか見ているうちにだんだん好きになって来た。
おお、小生もこんな建物を設計してみたい!

と、心の奥底を暴かれているみたいだなぁ~。(笑)

ドーリック 
ドーリック

シカゴ・トリビューン (ロース案) 
シカゴ・トリビューン (ロース案)

巨大なドリス式の柱 
巨大なドリス式の柱

前面道路側から
前面道路側から

駐車場側から
駐車場側から

見上げ(その1)
見上げ(その1)
見上げ(その2)
見上げ(その2)