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建築日誌
■赤坂一ツ木三度笠とスタジオ赤坂楼■    2006年02月03日

赤坂一ツ木通りに、不可解な大木がにょっきり生えている。
道の両側に、何本も何本も生えている。
これは、太古の昔からあったものではない。
2002年頃、突如としてこのメインストリートを覆ってしまったのだ。
どことなく、カッパドキアに似てなくも無いが、これにはれっきとした名前が付いている。
その名もずばり!「赤坂一ツ木三度笠」

♪ カッパ~からげてぇ~、三度笠ぁ~

の、あの三度笠である。
どう見ても小生には「雪国まいたけ」に見えてしょうがない。(笑)

この三度笠、実は有名建築家の作品なのである。
いい? ずばり言うわよ!
(って、さっき細木数子先生の番組見てたから、感化されてしまった)
その名はなんと、石井和紘なのである。
(知らないでしょうかね? 超有名なんだけど)
その石井先生、2002年に「地球温暖化防止活動」で大臣表彰を受けている。
この三度笠のほかに、丸太を使った作品を多く手がけたことによる受賞なのである。
ん? どこが地球温暖化防止活動?
と、驚く声も少なくない。
この三度笠、柱脚には鉄骨が入っていて、夜中にはこうこうと明かりを灯し、さらには木の幹にまで電飾が施されている。
余りにも明るいために、夜な夜なエゾシカの群れが木の皮を剥きに来ると言う。(笑)
うーん、確かに直接的にCO2は出さないのだろうが。……
見えないところは、なるべく見ないで済ませるのが、地球温暖化を防ぐためには必要なことだ。(笑)

この先生、実は赤坂と縁が深い。
赤坂4丁目付近の再開発組合の理事長であり、一ツ木通り商店街振興組合顧問でもあったのだ。
そして、面白いことに、この再開発の憂き目に会う4丁目には何と自分のスタジオが建っている。
いや、建っていた。
いや、いや、正確にはまだ建っている。(笑)

その名も「スタジオ赤坂楼」
昭和61年(1986)竣工。
地下1F、地上4F建て。
鉄骨造。サンプル様式。(笑)

はて? 
サンプル様式とは聴きなれない言葉である。
どういうことだろうか?
石井先生はこの建物を建てるに当たって、徹底的にコストダウンを心掛ける。
昨今では、コストダウンというと聞こえが悪いが、建築ではこれは当たり前の前提条件なのだ。

建物を設計するにあたって、とにかく困ることが二つある。
それは、分厚いカタログとたくさんのサンプルなのである。
本の蒐集家は、自分の足で、苦労して本を集めるのが道理だが、設計屋はたくさんのメーカーがこぞってカタログとサンプルを勝手に運んでくる。
もちろん、タダである。(笑)
タダだからといい気になって集めていると、とんでもない事態が発生する。
重くて床が抜けるのだ。
小生のような小さな事務所では、寝る場所もほとんど無い。
いざ捨てるとなると、今度は回収に金がかかる。
これが古書であったならば、……と考えてもどうにもなら無い。(笑)

そこに目を付けたのが石井和紘。
それならば、そのサンプルを使って家を建てれば良いではないか!
かくして、このスタジオ赤坂楼は、捨てるのに困ったサンプルを利用して完成された。
サンプルだから、当然、色・柄は揃わない。
そこがまたいいのであって、当時は、若手建築家はみんな真似たものなのだ。(笑)

久しぶりに訪れてみると、確かにサンプル建築は建っていた。
ただし、人の気配は無い。
入口のベニヤ板は、新しいサンプルであろうか?(笑)

昔はステキだったのになぁ~。
所詮、サンプルの末路は廃材として回収されてしまうのが落ちである。

三度笠アップ 
三度笠アップ

三度笠    エゾシカの被害 
たしか、この辺だったかな~。(笑)      エゾシカの被害

スタジオ赤坂楼
スタジオ赤坂楼(正面)

スタジオ赤坂楼(駐車場側)
スタジオ赤坂楼(駐車場側)

見上げ(その1)
見上げ(その1)

見上げ(その2)
見上げ(その2)