Isidora’s Page
建築日誌
■旧乃木邸及び馬小屋■    2006年02月10日

「将を射んと欲すればまず馬を射よ!」

これは「女将の心を射止めたいならば、まずは馬並みになれ!」と言う意味である。

って、すいません、のっけから下品なこと書いて。……
ここんとこカットカットしてくださいね!(小松政夫風に)
で、改めて。――
「人を自分の思うとおりにさせようとするならば、まずその人がたよりにしているものを狙うのがいい」という意味である。(改めて言うまでもありませんが)

あらゆる戦略中、この方法は実に有効である。
そんなことは百も承知している。
承知しているけれども、これがまたなかなか難しい。(笑)
設計をやっていて、一体誰に決定権があるのか? 
ということでいつも悩まされる。
ご主人か? いや、奥さんか? おばあちゃん? おじいちゃん? お子さん? 猫のミーコちゃん?(笑)
いつも世帯の主が決定権を持っていると考えるのは大間違いである。
また、お金を一番出資した人というものやや違う。
「台所だけは奥さんなのよ。」なんてアドバイスも良く聞かされるが、小生の経験ではこれもまた微妙である。
もはや奥さんの決定権は、台所だけにとどまっていない。(笑)
とにかく、この決定権者を見誤れば大きなダメージとなる。
打ち合わせに打合せを重ねて、ようやく承認を得たと思っていても「実は、娘がどうしてもいやだというんで。……」なんて答えが返ってくる。
これで全てが終わりである。
(だったらはじめから娘に聞いて置けよ!) と、思いつつ「そうですよね、じゃあ、今度はお嬢ちゃんと打合せしましょう。……」なんて、作り笑いを浮かべる。(笑)
うーむ、大将の姿は良く見えるのだが、肝心の馬の方は、何かに化けていることが多いのでご注意ください。(スガジー風)


旧乃木邸。
明治35年(1902)竣工。
設計は北沢虎造。
北沢は、海軍の技師である。
木造1F建て、一部半地下。
乃木神社に隣接している。

この建物、乃木将軍がドイツ留学中に見たフランス軍隊の建物を真似て造ったとされる。(笑)
傾斜地に建っており、入口は、高い方と低い方にそれぞれ設けてある。
外壁は、黒塗りのドイツ下見板張り。
屋根は日本瓦葺。
入母屋屋根の妻入りという、重厚なデザインである。

一方、馬屋の方は邸宅が新築される前から建てられている。
明治22年(1889)の竣工。
レンガ造、平屋建て。
変形オランダ積み(?)。

ご主人が木造に住んでいるのに、馬の方は立派なレンガ造に住んでいる。
当時このように噂されていたらしい。
馬を可愛がり、大切にしていた乃木将軍のお人柄を示す大変にありがたい美談である。(笑)
まあ、しかし、乃木将軍の戦績はお世辞にも優秀とは言えない。
指揮を取った、旅順攻略では約6万人が死傷したと言われる。
明治天皇の崩御に際して、妻静子をつれて殉死。
その後、御夫妻の英霊を奉安し、乃木神社が出来る。

果たして、ご夫婦の決定権はどちらにあったのだろうか?
まさか、愛馬にあったわけではあるまい。

乃木邸外観(その1) 
乃木邸外観(その1)

乃木邸外観(その2) 
乃木邸外観(その2)

乃木夫妻殉死の部屋 
乃木夫妻殉死の部屋

玄関ドア
玄関ドア

馬屋外観
馬屋外観

馬屋窓アップ
馬屋窓アップ

 馬舎内部
馬舎内部