Isidora’s Page
建築日誌
■三信ビル■    2006年04月05日

古けりゃいいってものでもないが、さすがにこのビルがなくなると思うと感慨深い。
ホームランビル、いや、三信ビル。(注:三振ではありません/笑)
三井不動産に吸収された三信建物が、昭和4年(1929)に建てた店舗兼オフィスビルである。
日比谷シャンテと対照をなす、昭和モダニズムの代表格的建築である。

設計は横河工務所。
横河民輔の一番弟子、松井貴太郎の手になる。
松井は「日本工業倶楽部」や「東京銀行集会所」などを手がけている。
ああ! この三信ビルも、前の二つのビルと同じく刺青建築となってしまうのだろうか?(笑)

外観デザインは、セセッションやアール・デコといった当時の流行を意識している。
曲面を多用した隅角部やパラボラを描いた開口部などは、表現主義の典型例。
どことなく、アインシュタイン塔を思わせ、近未来建築としての夢を創出している。
おそらくこれを見た驚きは、竣工当初よりも、現在の目で見たほうがはるかに勝り、今の方が斬新に見えるのではないだろうか?

圧巻は、何といっても内部空間である。
東西を突き抜ける1・2F吹き抜け状のアーケードは、SF映画にでも出てきそうな逆近未来風なデザイン。(笑)
ああ! 立体交差ヴォ-ルト天井!
今となっては、やや天井高さが低く感じられるが、これは当時のモデュールに従ったため仕方ないのだ。
エレベーターが5基もあり、収容人数よりもオーバースペックとなっているが(今では誰も乗らないみたい)、当時としてはハイテク機能備えた夢のオフィスビルだったに違いない。

一貫した様式にとらわれずに、ライト風のデザイン(手摺部)なども拝借するなど、なかなか遊び感覚が冴えている。
小生の大好きな幻獣もところどころに鎮座してあるし。(笑)
とにかく、細部にいたるまで手を抜かない。
松井は、きっと建築を「愛」していたに違いない。
しかし、テナントもほとんど出て行って、今では地下と1Fだけになったようである。
解体は間近に迫っている。
反対運動なども行っているらしい。
左右に浮かび上がるお店の看板が、どことなく切ない哀愁を漂わせているなぁ。(笑)

三信ビル 
三信ビル・ファサード(その1)

交差点からのアングル 
交差点からのアングル

 玄関アップ
玄関アップ

ファサード(その2)
ファサード(その2)

内観(アーケードその1) 
内観(アーケードその1)

内観(アーケードその2)
内観(アーケードその2)

内観(アーケードその3)
内観(アーケードその3)

幻獣
幻獣

階段室
階段室