Isidora’s Page
建築日誌
■旧武毛銀行本店■    2008年06月16日

「板垣死すとも、自由は死せず!」
……と、突然ですが。(笑)
昔、板垣退助の100円札があった。
小さいころ、宗男のお年玉袋には決まってこれが、一枚(だけ)入っていた。
考えてみれば100円硬貨と価値は同じなのだが、お札を持つことでなんだか大人の仲間入りをしたような気分になったものだ。
まあ、ていよく大人に騙されていたというわけだが。(笑)

ここは市街地からひと山越えた、秩父の山里である。
現在は秩父市に吸収合併されているが、旧秩父郡吉田町というところ。
こんな山奥に、こんなモダンな建物があるとは……
宗男は、山道で突然ハイカラなお嬢さんとすれ違った時のような、なんというか、その~、ちょっと照れ臭い気分になった。(笑)
この吉田町、実はかの有名な「秩父事件」発祥の地でもある。
ん? 秩父事件?
……と、首をかしげるお方も多いかもしれないが、実は宗男もよく知らない。(笑)
まあ、明治の初め、自由民権運動の盛んなころ、貧民の救済を目的に起こした農民蜂起ということである。(詳しくはこちら→秩父事件)
くれぐれも、秩父で起きた100円札偽造事件ではありませんから、勘違いしないでください。(笑)

板垣退助と言えば、自由民権運動である。
いや、だから秩父事件のことはよく知らないって。(笑)
今では想像も付かないが、明治・大正期の吉田町は生糸や繭でずいぶん栄えたらしい。
こんなハイカラな銀行が建つくらいだから、当時は人口も相当なものだったに違いない。
後に、郵便局や役所も、この武毛銀行に倣って造られたということ。
小規模ではあるが、ものすごいデザインレベルの高い建築物である。

旧武毛銀行本店(きゅうぶもうぎんこうほんてん)。
竣工は大正7年(1918)。
設計・施工は不詳。
レンガ造、2F建て。
屋根は寄せ棟瓦葺である。

この建物の特徴は、レンガ造であるにもかかわらず、前面と側面(の一部)のファサードは白いタイル張りであるということだ。
これには宗男も驚きましたぁ~!
しかも、タイル張りと煉瓦積みのデザインを小口積みに統一しているところがすごい!!
赤レンガと白タイルのコントラストを、これほど見事に分離しているデザインはめったにないだろうね。
まったく、潔い分離の仕方である。
ん?
最近のビルでは、見えるところしかデザインしないが、それと同じ?
そんなことないだろう……
まあ、紅白でめでたいし、宗男はこう言うのが好きだなぁ~。(笑)
古典様式を踏まえながらも、わざと近代的なモダンスタイルにアレンジしているし。
設計者の高度なデザインセンスをうかがわせるのだ。
こんな田舎に……。
と言っては失礼であるが、物まね一本やりの帝都の様式建築よりは、よほどオリジナリティーに長けていると言えよう。
わざわざ出かけたのに、中が見られなかったのがとても残念だった。

【所在地】埼玉県秩父市下吉田3871-1 グーグルマップ


旧武毛銀行本店 
旧武毛銀行本店

旧武毛銀行本店
外観その2
旧武毛銀行本店
様式から脱却した、近代的デザイン!

旧武毛銀行本店
紅白、きっぱりと分断!

旧武毛銀行本店
なぜか石碑が……

旧武毛銀行本店 
玄関扉のデザインがすごい!(鏡板も立体模様)