Isidora’s Page
建築日誌
■カフェ・パリー■    2009年10月24日

一口に「レトロ」と言っても、人それぞれ想い浮かべる年代が違うようである。
宗男なんかは、大正期や昭和の初め頃を思い浮かべるのだが、みなさんはどうでしょうか?
と言っても、宗男はそんな歳でもないから(若くもありませんが)、大正や昭和の初めなど全く経験していない。
思い浮かべるのは、映画や写真で見た記憶と、年寄りの話や本などで知り得た知識。
そして、それらを混ぜ合わせた幻想の中でのイメージである。
小さい頃のリアルタイムな思い出は、懐かしいものではあっても余り「レトロ」とは認識されないようだ。
どうやら宗男の「レトロ」感覚は、いい加減な幻想感覚なのである。(笑)
はい。
「レトロ」と聞いて、「メトロ」を思い浮かべたそこのあなた!
みんな目をつぶっているから、正直に手をあげなさい!(笑)

『カフェ・パリー』(現パリー食堂)
竣工:昭和2年(1927)。
設計・施工:不詳。
木造2F建て。
外壁:ラスモルタルの上リシン吹付
屋根は鉄板葺きと資料にある。

ここは秩父の番場町。
レトロな建物がたくさん残っている町である。
とりわけこの交差点には、レトロな建物が集合している。
去年の6月にUPした「小池煙草店」は、この建物の左隣の建物の面する交差点の対角線上の角にある。
ん?
場所、分かっていただけましたか?(笑)
あっ、この写真も実は去年の写真です。
日本建築をUPすると、ついつい理屈っぽくなっちゃう宗男なので、ちょっと頭を冷やすために秩父へ飛びます。(笑)

写真をみる限り3F建てのようにも見えるが、実は2F建てである。
3F部分の窓は、なんと小屋裏の窓なのです。
ああ、小屋裏の窓!
何とも妖しい雰囲気ですね。(笑)
屋根は正面側が一番高くなっており、後ろの方へ片流れになっている模様。
これは、低い建物を何とか高く見せようとする工夫で、これぞ看板建築のだいご味である。(笑)

2Fの窓はアルミサッシュに改修されているが、ペディメントのレリーフは昔のままだと言う。
2Fはアカンサス(?)風のデザインだが、小屋裏の窓の方は小桃(コモモ)みたいなデザイン。
なぜにコモモ?
と思うのですが、桃かどうかは分からないし、桃であってほしいという願望だけは強いです。(笑)
パラペット部にはコーニスが巡らせてあり、ぐっと高級感を出している。
面白いのは、ここを巡るモールディングが、四角いデンテル模様(歯型)ではなく、エッグアンドダーツと呼ばれる卵鏃文様(らんぞくもんよう)であるところ。
左隣の建物と比較すると、パラペットの2段目の下に模様が入っているのがわかるでしょう。
これがエッグアンドダーツであります。
矢じり模様が、少し怪しいかな?
いや、写真が小さくてすみませんね。
ボケてしまいますが拡大しておきます。
↑エッグアンドダーツ及びコモモの拡大

エッグアンドダーツとは、卵とやじりを交互に連続させた模様のことで、ギリシャ・ローマ時代から使われている文様。
卵が舌のようにも見えることから、舌鏃文様とも呼ぶようです。
ここをデンテル(歯型)ではなく卵、もしくは舌にしているのは、元々カフェーであったことに由来するのだろうか?
だったら、桃との関連も浮かび上がるかも?
なんて思いましたが、歯でも卵でも舌でも、どれも食べることに関連しているようですね。(笑)

それにしても、このお店。
何ともレトロな雰囲気を醸し出している。
このショーケースを見ただけ、大変に食欲がそそります。(笑)
お味の方も、なかなか評判がいいらしい。
秩父へおいでの際は、ぜひともパリー食堂をご利用ください。
いえ、宗男は都合により、他のお店でお昼を食べさせていただきましたが。(笑)

【所在地】埼玉県秩父市番場町19-8 グーグルマップ


カフェ・パリー 


カフェ・パリー
カフェ・パリー

カフェ・パリー
3階のように見えるのは小屋裏の窓

カフェ・パリー
エッグアンドダーツ及びコモモの拡大

カフェ・パリー
レトロなショーケース

カフェ・パリー