「相馬株式会社社屋」
大正13年竣工。木造2階建て。設計・施工筒井長左衛門。地元の大工である。正月で玄関は閉まっているが、もちろん現役バリバリの建築物である。電車通りに面した、大町界隈のランドマークとなっている。
とにかく、本格的である。小生は本来本格は好まないのだが、この建物だけは別である。教科書通りのルネッサンスである。いや、バロックも混じっているかな? あれ? 鬼瓦が日本風かな? あれ? ちょっと怪しいかな?
かつての函館のバスガイド達は、ヨーロッパのルネッサンスはみんな木造建築だと思っていたとか、いないとか。……(笑)
創設者の相馬哲平は、函館の歴史を語るとき、絶対はずせない人物である。金持ちである。大富豪である。経済人である。倹約家でもあるが、けちではない。函館の公会堂を作った人物でもある。いや、実際に作った人ではないが、金を出した人である。実にかっこいい!
かつて相馬商店は、函館の経済の中心を担っていた。元は米屋から始まったらしいが、今では何をしているのだろうか? いや、とにかくその会社が21世紀の今日、昔ながらの社屋でとつとつと商売をしている。建築の保存のあり方として、これほどあり難いことはない。
まず、外観から概観してみよう。(すいません)
基壇部は石積みで、外壁は箱目地下見板張りである。
1階の窓は三角ぺディメントで、2階はくし型ぺディメント。2段胴蛇腹も本格的で、玄関の柱頭はコンポジット(風)である。重厚な桟瓦屋根を乗せ、ドーマー窓まで付いている。おっと、忘れてはいけない玄関上の2階窓は、当時流行のベネチア窓である。(日本語では三尊窓と訳されるから不思議である)軒裏の持ち送りや玄関のブラケットなど、どこを取っても、いや、CTスキャンに掛けて見たって典型的なルネッサンス様式である。(かな?)しかも、ややバロックがかっているところが、実に小憎らしいではないか。
この建物も、ご他聞にもれず地元大工の手になる擬洋風建築である。木造下見板で、これほどまでにルネッサンスを再現出来るのだから、昔の人は本当に偉かった。内部は、写真でしか見たことがないが、フルート付きの実に優雅なコリント(風)柱が聳えている。そんな中でパソコンやコピー機が置いてあるのかと思えば、なんとも不思議である。
相馬株式会社社屋・外観1
外観 2
外観 3