■牛久シャトー(旧醗酵室)■ 2005年09月18日
本館の奥には、現在資料館として一般公開している旧醗酵室がある。
竣工は本館と同じく明治36年(1903)。
こちらの設計者は不詳である。
しかし、屋根の瓦棒やドーマーなどのデザインが本館と酷似しており、岡田時太郎と何らかの関連があるものと推察する。
ちなみに、レンガの積み方は本館と同じイギリス積みである。
それにしても、かなり本格的な煉瓦造である。
チャペルを思わせるパラペットの形状と、半円アーチや、弧型アーチの巧みな組み合わせ。
ルネサンス風・ロマネスクとでも言うのだろうか?(笑)
内部は天井が張られておらず、見事な洋小屋が露出している。
この小屋組みは「キングポスト・トラス」といい、曲げ応力のかからない合理的な構造なのである。
梁材が2枚重なっているのを合わせ梁という。
ろく梁(一番下の水平な梁)と、真束(真ん中のタテ材)の交点に用いられているものは箱金物。
一番上の斜めの梁のことを「合掌」という。
ろく梁と斜材(方杖)と合掌との交点を繋いでいるのが吊ボルト。
本来これは吊束といって、木材ではさむのが普通であるが、ここでは構造理論通りに細いボルトで済ましている。
以上のことから、吊束には圧縮力も引っ張り力もかからないことが一目でわかる。
擬洋風の建物は、外観は洋風であるが内部の構造体は和風のままであることが多い。
しかし、ここでは本式の洋小屋が採用されており、田舎の擬洋風とは一線を画するものである。
さすが、プロの仕事だ。
1Fにはワイン樽などが展示されており、観光としても面白い。
柱の上が木の枝上になっているのは柱の「方杖」(ほうづえ)であり、これも洋式の特徴である。
スケルトンの倉庫建築などは、このように構造洋式を目の当たりに出切るので面白い。
と、今日はまじめに終わらせよう。
牛久シャトー(旧醗酵室)・外観
小屋組(キングポスト・トラス)
方杖の見える1F柱