Isidora’s Page
建築日誌
■水戸商業高等学校旧本館■    2005年09月26日

水戸まで出かけた甲斐があった。
かなりの収穫である。
中でもこの建物は、想像通り以上の出来栄えであった。
「感動したっ!」
と、最近あの方はおっしゃらないが、小生は本当に感動したっ!
中へ入ることは叶わなかったが、遠くからそっと見つめるだけで小生は満足である。(笑)

明治37年(1904)竣工。
施工は大倉土木。
設計は駒杵勤治。
駒杵勤治は、あの「旧土浦中学校本館」を設計した人物。
県下に3棟残っている内のひとつである。
あとひとつ巡礼すれば、ボーナスアイテムがもらえる。
って、小生はゲームのことなんかてんで知らないのだが。(笑)

面白いほどにピンクが似合う建物である。
旧土浦中学の時にも書いたが、駒杵はあの辰野金吾に指示した、いや、師事した帝大卒のエリートである。
土浦中学と同じ年に竣工したわけで、ものすごい勢いで設計したものと思われる。
現存する部分は、その玄関部分である。(登録文化財)
バロックである。バロック建築!
辰野に師事したことだけあって、その影響はかなり強い。
警視庁のマスコット人形である「ピーポ君」の頭のようなドームが2ヶ所。
中央の玄関は、大理石を積み上げた付柱に切妻破風を乗せ、アーチにはキーストンがデザインされている。
ドームの屋根材は、天然スレートであるという。
稜線にリブが用いられており、リブボールトを模した重厚な意匠。……

手前の石柱に書かれた説明を読むと「ヴェルサイユ宮殿を模したと伝えられ、屋根・柱の形態や石貼りの外壁にその特徴が現われている。」ということである。
ああ、ヴェルサイユ宮殿!
こういった説明を石に刻む人物は、きっとあの世まで刺客に追われるでことあろう。(笑)

随所に和風のテイストが滲み出ている。
しかし、和風を和風と感じさせないところが、駒杵の力量である。
破風の丁部にある鬼瓦風妻飾り。
唐草でもなく水引でもない、太古の記憶を呼び覚ます柱上のシンボルマーク。
彫りの深い大理石の神聖さ。
あれ? なんだろう?
きらきらと輝く雲母のような煌きは?
え、えっ!
もしかして、ペンキが剥げている。
しかも、その下地は紛れもない溶融亜鉛鉄板ではないか?(笑)

いやー、驚きました。
説明書きにだまされるところでした。
大理石に見えたところは、実は鉄板でできていて、その上にペンキを塗ってごまかしている。
どうりで、どぎついピンク色なはずだ。(笑)
これは、竣工当時からのものだろうか? 分からない。
それにしても、なぜに鉄板を使用したのであろう。
せめて、漆喰でかたどっても良かったのに。……
そういえば、この建物は木造のはずだ。
屋根が本当に天然スレートかどうか、確かめるのが少し怖い。

でもでも、立派な建物である。
今日、駒杵勤治はもう少し評価されてしかるべき建築家である。
もう少し金をかければ、師匠よりもずっとずっとセンスのいいものを造れたはずだ。(笑)

水戸商業高等学校旧本館 
水戸商業高等学校旧本館・正面外観

やや斜め外観
やや斜め外観

 玄関拡大
玄関拡大

剥げたペンキ
剥げたペンキ(右側の柱にご注意)

 側面外観
側面外観

シンボルマーク拡大
シンボルマーク拡大