■菅原家住宅■ 2005年10月21日
日本民家園第2弾!
旧所在地は、山形県東田川郡朝日村松沢
農家(肝煎の家だと言う)
18世紀末頃。
茅葺屋根、妻入り、一部2F建て。
見事なかぶと造りである。
いや、この地方の特徴は、寄棟屋根に高窓(ハッポウ)や切上げ窓(高ハッポウ)が設けられており、これを特に「ハッポウ造り」と言う。
かっこいい! 実にかっこいいのである。(単純なほめ言葉が一番マッチする)
この建物を前にすれば、設計者が誰であろうか? などという愚かしい考えは浮かばない。
ただ、このフォルムを見るだけで感動するのだ。
美とは無記名の内に存在する。
あるいは、美とは個人の内に形成されるものではない!
と、知った風なことを言う、無性にイライラしている小生でした。(笑)
どうです。このきりりとした、武士のようなデザイン。
しかも、近代建築さえ及びも付かない超機能主義である。
この地方は、いわずと知れた豪雪地方で、寒さ対策と雪対策、ひいては生活の手段としての蚕室の機能を有している。
まさにコルビュジェ「住むための機械」なのである。(笑)
大戸口(玄関)の上には、落雪を防ぐためにハッポウが切ってあり、しかもそこからは採光を取る。
豪雪の時は、そこが出入り口にもなるのである。
通常、玄関を入るとすぐに土間(ニワ)があるが、ここでは「アマヤ」と言う風除室(前室)が設けてある。
ニワニハ(笑うところ)、「イナベヤ」と言う板敷きの間もある。
間取りは、食い違い4つ間取りである。
「オメイ」「デイ」「カミデイ」「ウーヘヤ」と、これもまた異国の地の人が住むような部屋名。
「オメイ」は「オマエ」と違って、ここでは囲炉裏のある居間のことである。「デイ」は客間。(ここにも囲炉裏がある)
「カミデイ」は正式な座敷。「ウーヘア」はヘア解禁のことではなく(いや、なんか同じ事を言ってる気がするが……)、寝室のことである。
屋根の棟にも特徴がある。
棟のことを「グシ」とも言うらしいが、ここでは三角形に組んだ「千木(ちぎ)」(クラという)を乗せることから「グシグラ」と呼ばれる棟飾りが付いている。
千木は神社棟にある飾り物で、これは格調が高い。
因みに肝煎りとは、落語で言えば遊女の世話人の事をさすが、まさかここではそうではあるまい。
ちょっと調べたところ、名主・庄屋の異名であると言う。または口入れ屋。
「カミデイ」には阿弥陀様を奉ってある。
うーん、これがもし観音様だったなら?……(笑)
菅原家住宅・外観(高ハッポウが見える)
板壁で囲った外観と高ハッポウ
「オメイ」内観