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建築日誌
■旧天端寺寿塔覆堂(山渓園)■    2005年11月14日

生きているうちに自分の墓を建てる人がいる。
意外とこれは少なくない。
生きているうちに自分の家も建てられないのだから、墓を建てるなどよっぽど余裕のあるお方であろう。……
と思ってもみるが、実はそうでもないらしい。
生きている間に家も建てられないのだから、せめてあの世の住処だけでも生きているうちに建てたい。
こう思っているお方が多いのである。

寿塔とは、長命を願って、生前に建てるお墓のことである。
かえって縁起がいいといわれる。
よく、死人の役をやる役者は長生きをするという。
そういえば、生前葬などというものもある。
有名なところでは、ターキーこと水の江滝子の生前葬であろうか。(まったく、古い話をしている。)

それはともかく、この天端寺寿塔覆堂は、秀吉が天正20年(1592)に母の長寿を祝って建立した寿塔の覆堂である。
中身は京都大徳寺の竜翔寺にあるとされる。
斗きょうの中から銘が発見され、本物である可能性が高い。
明治35年、原さんが山渓園に移した。
さすが、鋭い目利きである。(笑)

屋根は本瓦葺。軒唐破風付き。入母屋造り。
三間四方の小ぶりなものだが、見事な彫り物に目を奪われる。
桃山時代の豪壮さを示す大変に貴重なものである。(と、訳知り顔に説明する/笑)

そう、思い出した。
郵便配達夫シュヴァルも、生きている間に自分の墓を作っていた。
ピラミッドなども、王の生前から建設されるものである。
昔、インテリア科にいた女の子が、授業で自分の墓を設計せよ! との課題が出たので、小生に何とかしてくれと頼み込んで来たことがあった。
古い話なので、どう対処したか忘れた。(笑)
心の優しい小生はきっと、――いや、これ以上は墓穴を掘りそうなのでやめておこう。……

外観(その1) 
旧天端寺寿塔覆堂(山渓園)・外観(その1)

外観(その2)
外観(その2)

外観(その3) 
外観(その3)