■国際こども図書館(旧帝国図書館)■ 2006年01月14日
果たして、良くなったのか? 悪くなったのか?
この問いかけは、建物の保存改修問題を考えるとき、どうしても避けて通られない重要かつ厄介な問題である。
「まあ、立場によって、それぞれで。……」
こう言ってしまえば身も蓋もいない。
身も蓋もないけど、これが一番の模範解答である。
四の五の言うよりも「三(身)も二(蓋)もない」のが一番いい!
って、これを考えるのに小一時間。……(笑)
国際こども図書館。
上野公園の端っこに位置する。
平成12年(2000)の竣工。
設計は東京大学名誉教授の安藤忠雄+日建設計(日本最大の組織事務所)。
施工は鴻池組(準大手ゼネコン)。
地下1F、地上3F。
鉄骨補強煉瓦造に、鉄筋コンクリート構造を増築。
収蔵能力は40万冊。
地下部分は、免震構造に改修されてある。
この建物、もともと明治39年(1906)、帝国図書館として建てられたもの。
明治30年、「帝国図書館官制」の勅令により東洋一を誇る大図書館を建てるべく設計されるが、折りしも日露戦争が勃発。
国家財政の行き詰まり・工期延長などで、全体計画の約1/3で打ち止めとなった。
いわば、未完の対局、いや、未完の大傑作!
昭和に入ってから、二、三度増築されている。
現状見る建物のファサードは、全体計画から言えば何と正面ではなく側面である。
つまり、われわれは横顔を見て「正面だと思え!」
と、命令されていたこととなる。(笑)
当初の設計は、文部省技師の眞水英夫。
(余談ですが、このあいだ某新年会に出席したら「株式会社H2Oの真水(まみず)です」という紹介があった。H2O=真水、このギャグ、H2O辞めたら使えなくなるだろうなぁ~。)
しかし、すぐにこの計画に横槍が入る。いや、眞水だけに水が差された。
眞水の東洋的デザインが不評で、同省の建築課長である久留正道がなんとアンピール様式で設計し直したのだ。(久留正道は、前回の東京音楽学校奏楽堂を担当した人物)
アンピール様式。
この聞きなれない様式は、19世紀初頭のフランスで流行した「朕古典主義」いや、「新古典主義」のこと。
ナポレオン一世の肝入りで大流行し、ギリシャ・ローマ様式に加えエジプト様式を混合したものという。萌えたんだよね~、当時ナポレオンはエジプトに。……(笑)
で、どこがアンピール様式なのかと言うと、うーん、良く分からない。
少なくとも安藤先生の打ち放しコンクリートとガラスの部分ではないことは確かである。(笑)
安藤先生と日建設計との関係も、どうも臭い。(ぷんぷん)
なぜにペアを組まなければならなかったのか?
耐震設計の部分は日建設計が担当し、デザインが安藤先生が担当したものか?
まあ、その逆でないことを切に願う。(笑)
石と煉瓦の古い様式建築に、新しい素材であるアルミとガラスを使って、ポッコリとそれを嵌め込んでしまう。
最近の保存改修計画の常套手段である。(もう見飽きました)
安藤先生もこれをそっくり真似た。
いや、よくよく熟考の末、この方法をご採用なされた。(笑)
いつも安藤先生の仕事には文句を言っている小生だが、今回だけは別である。
とってもいいのだ。(笑)
使いやすい。しかも、しごく綺麗だ!
手摺だって、高さが足りないが、元のものに手を加えずにガラスでカバーした。
窓だって、そっくりそのままガラスで保護している。
安藤先生お得意の打放しコンクリートも、裏手に隠されているし。(笑)
いつも、否定するばかりでは能がない。
ちゃんと肯定してやるべきところは肯定すべきだ。(と、小生に肯定されてもしょうがないだろうが)
とにかく、なかなかの出来栄えなのである。
使い勝手は、数段良くなったはずである。
まあ、気に入らなければ、安藤先生の部分だけ取り壊すのも簡単だし。……
と、こういう皮肉ばかり言ってるから、小生はだめなんだなぁ~。(笑)
さて、結果的に良くなったのか、悪くなったのか?
あなたはどう思いますか?(笑)
国際こども図書館(旧帝国図書館)・正面(実は側面)
ガラスの玄関ホール
外観
階段室
階段室見上げ
室内入口
旧外壁
安藤先生の部分と旧い部分の対比