■堀ビル■ 2006年02月12日
新橋といえば、サラリーマンのメッカである。(注:ダッカではありません)
よく、テレビのニュースなどでインタビューを受けるサラリーマンは(最近ではリーマンと呼ぶらしい)、いつも新橋駅前で飲んだくれるリーマン達である。
業界では、これを「リーマン・ブラザーズ」と呼ぶ。(ウソ)
あろうことか、かつては小生もこの新橋界隈で飲んだくれていた、リーマンの一員であった。
烏森神社やニュー新橋ビルなどは、生涯忘れることの出来ない嫌な、いや、大切な思い出である。(笑)
大切な思い出といえば、もう一つある。
新橋で忘れてはならない思い出深い建物。
それは、何を隠そうこの堀ビルである。(いや、何も隠してはおりません)
竣工は昭和7年(1932)。
設計は公保敏男。
施工は安藤組。
RC造4F建て。
長い間、設計は公保敏男一人として知られてきたが、最近の調査によって実はもう一人、小林政紹が絡んでいるといわれている。
小林政紹は、大蔵省の技師。
国会議事堂の設計メンバーであり、あの「聖徳記念絵画館」のコンペ入賞者でもある。
面白いことに、小林と公保は兄弟であるという。
小林は役人だから、民間の建物の設計をアルバイトで手がけてはならなかったのだ。(笑)
創業100年以上にもなる堀商店は、今でも現役バリバリの鍵・錠前屋である。
建築金物中心に扱う老舗。
目立たない建築金物という分野を、ここまでおしゃれに仕立てた功績は、オリンピックでたとえるならば6位入賞くらいである。(意外と評価が低い/笑)
とにかくシビレル建物である。(いえ、漏電しているわけではありません)
角地に建ち、アールを持った外壁が実に印象深い。
外壁は、スクラッチタイルを使用して、水平ラインをテラコッタのボーダーで締めている。
塔状部分は、サラセン風の縦長窓で強調し変化をみせている。
また、ランドマークともなる火の見やぐら風のペントハウスも、なかなかセンスがいい。
とにかく、装飾が絶品で、屋根に連なるギザギザのアンテフィクスもおしゃれである。
柱部分は、鍵屋のイメージを象徴したメダイヨン風の装飾で一杯である。
ウインドウの飾り柱も、ユニコーンの錐揉み状の角みたいで、面白い。(ペコちゃんの、スティック・キャンディーと小生は呼んでいます)
すこぶる手が込んでいる。
大したものだ!
ショウ・ウインドウに飾られる現代的な建築金物と、中世とモダニズムが混淆する幻惑のデザイン。
こんな素晴らしい建物の前を通っても、新橋のリーマン達は相変わらず眠そうだなぁ~。(笑)
堀ビル・全景
玄関アップ
見上げ(その1)
通用口
玄関脇
柱の装飾
鍵の陳列
ペコちゃんのスティック・キャンディー