Isidora’s Page
建築日誌
■瀧山町ビル■    2006年08月16日

女性は年齢を重ねるにつれ美しくなると言う。
また、女性は四十を過ぎてから、本当の美しさが現われるとも言う。
若尾文子、吉永小百合、酒井和歌子、中野良子……
うんうん、確かにその通りだ。
四十代の女性の皆さん!
あなただって、今すぐ吉永小百合になれるのです。

注:これは、ド○ホルンリンクルのセールスではありません。
  試供品のご注文はお受け致しかねます。(笑)

いや、冗談ではない。
何が冗談ではないかというと、女性はともかく(?)、建築は年齢を重ねるにつれ美しくなるからである。
もちろん、若いピチピチギャルをお好きなお方も多いことでしょう。
もちろん小生も大好きですが……いや、その、嫌いではないという意味ですが、人間だって建築だって、それなりの年輪を重ねてくれば、自ずとそこに個性が生まれます。
順風満帆な人生もあれば、波乱万丈、天真爛漫、天下泰平、変幻自在……(でたらめな四字熟語を並べております)
費やした月日は人それぞれ違いますが、女性も建築も、その生きてきた過程というものの中に真の美しさが潜んでいるのです。(パチパチ)

なぜだか終戦記念日に、中年の主張をしてしまいました。(笑)
というのも小泉首相の靖国参拝とは関係なく、クレーン船での大規模停電とも全然関係ない。
古い建物がどんどん取り壊される憂き目にある銀座6丁目。
ここにある瀧山町ビルを見るにつけ、常々小生は心にこう思うのである。

小生は古い建物を残せ!
と主張する者ではない。
どっちかというと、どんどん壊して、新しいビルを建てようね! 
の方かな?(職業がら/笑)
小生は、オリジナルデザインを尊重するあまり、増築した部分をわざわざ取り壊してまで、最初期のデザインに戻す「復元」の仕方に怒りを感じるのである。(かっ!)
もちろん、「復元」したほうがいい建物もある。
しかし、何でもかんでも復元するという思考停止状態が大嫌いなのである。
「命を大切にしない奴なんか、大嫌いだ!」
と、アニメ映画でもやっているではないか!(笑)
建築は日を重ねてこそ味わいが出るものである。
何でもかんでも、元通りに戻すことが最良の方法ではないのだ!

※かの東京駅も、わざわざ莫大な金と時間を掛けて元に戻すという。
実は密かに楽しみにしているのだが。……(笑)


このビルを見よ!
年齢は78歳!
なんと、若々しいことか!
瀧山町ビル。
設計は三輪幸左衛門。
施工は錢高組。
昭和3年(1928)竣工。
資料にはRC造、5F建てとある。

ん? RC造5F建て?
いち、にい、さん、しい、ごお、ろくぅ~。
もう一回!
いち、にい、さん、しい、ごお、ろく。
ん? ん?(笑)

このビル、銀座にあって瀧山町ビルとは、これいかに?
いえ、もともとこのあたりは「瀧山町」という名前らしいです。
地元では「kenT'S」の入っているビルと言った方が通じるようだ。
いや、そう言わなければ誰もわからない。(笑)

設計者の三輪幸左衛門。
これがなかなかデータが集まらない。
わが敬愛する村松貞次郎先生の著作を見れば、どうやら海軍技師から東京市建築局に入った役人らしい。

特筆するは、玄関廻りのテラコッタ模様。
いかにも昭和初期の深い味わいをかもし出している。
しかも、あたかも水平横連層窓のようにみせかけた、単連ポツ窓。
各層にリブ状のテラコッタが施され、腰窓を連続することによって水平性を強調している。
見事である!
近代的である!
表現主義である!
6F以降のアルミスパンドレル、ほらこれが年輪というものですよ。(笑)

テナントもたくさん入っているようで、飛び出した看板なんかも歳を感じる。いや、都市を感じる。(笑)
1F周りは全体のデザインなどお構いなしで、外観までテナントが勝手にデザインしている。
まあ! おしゃれである。
上さえ見なければ、新築の店舗と変わりがないのだ。

こうして、78歳のおばあさんは、いつまでも若々しく美しいのである。
生きることは変化することである!
このビルは、いつまでも変わりあって、元気でいて欲しいですね。
サイナラ、サイナラ!(淀川長治風/笑)

瀧山町ビル 
瀧山町ビル・全景

玄関見上げ
玄関見上げ

交差点から 
交差点から

玄関ファサード 
玄関ファサード

お洒落なブティック 
お洒落なブティック