Isidora’s Page
建築日誌
■旧武州銀行川越支店(現川越商工会議所)■    2008年06月04日


今日は、川越で大変な事件が起きたようだ。
なんと、車に立てこもった男がピストルを発砲!
銃弾は八方(はっぽう)へ散らばった。(笑)
――と、冗談はいけませんね。
とにかく、一般市民に怪我人が出なくて良かったです。
はい。

前にも書いたが、澁澤龍彦は4歳まで川越に住んでいた。
父の転勤によるものであるが、その父・武が副支店長を務めていたのがこの銀行である。
重厚なクラシック・リバイバル!
無骨ではあるが、武州銀行という名にふさわしい感じがするなぁ~。
武州銀行は、かの澁澤榮一翁がその設立に深く関与したという。
それかあらぬか、デザインにも相当金がかかっており、威風堂々としたドリス式の大オーダーはまさに「銀行」というイメージにぴったり。
華やかさには欠けるものの、信頼性と安定性にかけてはこのドリス様式に勝るものはない。
と、宗男は思う。
ドリスは様式は、ギリシャ神殿オーダー中、基本の中の基本なのである。(エッヘン!)

旧武州銀行川越支店
上の写真をよ~くご覧いただきたい。
レンズのゆがみはあるものの、幾分柱の中央がふっくらとしていませんか?
なに!?
まるで宗男のお腹のようにメタボってるって?
はい。
そうなんです。
これを、正真正銘の「メタボリズム」と言います。
って、うそですよ~。(笑)
実は、この柱のふくらみのことを「エンタシス」と呼びます。
このエンタシス、日本の法隆寺の柱にも用いられていることを御存じですか?
これを見て、法隆寺の源流はギリシャ神殿にあるはずだ!
という学説を立てたのが、かの伊東忠太先生。
結局、この学説は証明されなかったのであるが、メタボ腹は間違いなくギリシャ料理に源流がある!
と、宗男は密かに研究している。(笑)

旧武州銀行川越支店(現川越商工会議所)
竣工は昭和13年(1938)。
設計は前田健二郎。(諸説はあるが「武州銀行川越支店新築工事概要」に前田の名前が記されているらしい。)
施工は清水組。
RC造、2F建て、地下1F。

設計者の前田健二郎は、大隈講堂のコンペ1等案に当選した建築家である。
しかしながら、残念なことに彼の案は最終的にボツとなった。
ん?
1等取ったのにボツとはなんていうことだ!(笑)
その恨みを晴らすためかどうか知らないが、この銀行では相当力を入れて設計しているのが伺える。
まず、玄関ペディメントには、当時としては相当ショッキングな「小江戸川越春まつり」の看板が掲げられ……
ん?
こ、これは違いましたね。(汗)
玄関ペディメントの上にはバロック風のメダリオンが掲げられ、重厚さの上にも華やかさを注ぐことを忘れていない。(やっぱり、看板の方がずいぶん華やかですがぁ~)
「スカートの中と軒天井は、見上げられてなんぼやねん。」
をモットーに(なぜか関西風)、軒天井を見上げると花柄模様でいっぱいである。
宗男としては、イチゴ柄にしてほしかったと思うものだが、まあそれは個人的見解なのであしからず。(笑)
「フリーズ」と呼ばれる柱上部の中間帯にも(ブリーフではありませんよ)トリグラフ(タテの模様)が入っていて、これもドリス様式の基本に忠実である。
しかも、その間にひとつずつメダリオンが飾られているなど、やはり華やかさを忘れていない。
宗男としては、ここにもイチゴの模様が……
いや、これはもういいですね。(笑)

それにしても澁澤龍彦のお父さん、さすがにすごいところで働いていたんだなぁ~。
と、つくづく感心してしまいます。
澁澤一族、侮れませんね。(当たり前だ)
「大正浪漫夢通り」に面する、川越を代表する近代様式建築の傑作であります。
むらさき芋のアイスクリームを食べながら、一度見てみてね!

【所在地】埼玉県川越市仲町1-12 グーグルマップ


旧武州銀行川越支店 
旧武州銀行川越支店

旧武州銀行川越支店
全景

旧武州銀行川越支店
玄関ペディメントとバロック風のメダリオン

旧武州銀行川越支店
威風堂々としたドリス式の大オーダー