近藤邸。
わが国、薬学界の最高権威、近藤平三郎博士の生家である。
知る人ぞ知る!
いえ、宗男は全く知りませんでしたが。(笑)
松崎町メインストリート「なまこ壁通り」に屹立する、超弩級 なまこ壁建築である!
☆
この近藤平三郎博士(1877~1963)、アルカロイドの研究で名をはせた日本を代表する薬学者だという。
アルカロイドとは、窒素原子をふくむ、塩基性を示す天然由来有機化合物の総称のこと。
……と言われても、何の事だかさっぱりわからない。(笑)
筋肉増強剤のステロイドなら知っているが、どうやらそれとは違う。
むかし、ハロルド・ロイドと言う喜劇役者がいたが、やっぱりそれとも違うらしい。
アルカイーダとは関係ないだろうし、アルカイック・スマイルとも違う。
アンドロイドとは全然かけ離れているしなぁ~。
ん~?
知らないのなら、はじめから書かなければよかったですね。(笑)
☆
知らないことがあると放っておけない宗男は、もう少し詳しく調べてみた。
なんと、荒俣宏の記事を読むと、近藤平三郎はコンドロイチンの発見者であるという。
おお!
コンドロイチンなら知っている!!
最近、巷で流行のサプリメントの原材料のこと。
うなぎや納豆、オクラなど、ねばねばした食品に多く含まれているとされる。
たいへん「精」がつくとも人伝えに聞く。(笑)
コンドロイチン(chondroitin)。
意味は、近藤(コンドー)博士が発見したことに由来する、珍しい蝋状のエキスという意味だ。
漢字をあてがうと、「近藤蝋珍」(こんどうろうちん)となる。
……って、皆さん嘘ですよ~。(笑)
荒俣宏によれば、確かにコンドロイチンの発見者と書かれているが、これはどうも調べがつかなかった。
そもそも、アルカロイドもコンドロイチンもよく分かりませんし~。
だまされたお方、決してお友達に教えたりしないでね。(笑)
☆
近藤邸。
江戸時代後期の竣工。
設計者・施工者不詳。
木造2F建て、なまこ壁漆喰造り。
江戸時代から続く、薬問屋である。
☆
「近藤蝋珍」のことはまた別項にゆずるとして(ゆずるのかよっ!)、ちょっと建物についてふれてみたい。
いかがでしょうか?
この、壁面びっしりのなまこの大群。(笑)
山光荘の項でも言ったとおり、なまこ壁は防火性能を有するばかりではなく、断熱、耐風、耐雨にすぐれた構造なのである。
屋根瓦を壁に貼り付けているので、横からくる雨にも耐えられる。
手間暇と金がかかることから、腰壁までの施工としているところが多いのだ。
ところがこの近藤邸、軒先の「はちまき」部分以外はびっしりとなまこを貼っている。(写真で白い部分がはちまきといいます。)
下屋の部分は、破風にもなまこがいる始末である。
時代が後になると、全身なまこと言うものも少ないないが、もうそこまで行くとバロックですね。(笑)
☆
同じ土蔵造りと言っても、川越に見られる土蔵と、西伊豆に見られる土蔵ではやや趣が違う。
もちろん、デザインそのものが違い、店蔵と言う機能面での違いもあるのだが、耐火に関する考え方が違うのではないか?
と宗男は常々考えるのである。
はい、常々です。(笑)
もし、耐火性能を最も重視するのであれば、近藤邸に見られるような開口部ではいささか不安である。
しかも、2Fの窓には深い庇が造られている。
火災の時、一番先に火の手が上がるのがこの庇(軒先)なのである。
だから明治以後の多くの土蔵は、軒先をなくし平たい「はちまき」としているのだ。
その危険を冒してまでも深い庇にこだわる理由は、むしろ雨仕舞を考慮してのことだろうと考えるのが普通である。
いや、普通とは違った理由かも知りませんが。(笑)
たまにしか来ない火事よりも、伊豆地方特有の日常茶飯な暴風雨に対しての措置を優先した。
う~ん。
リスクヘッジと機能性と経済性とのバランスを考慮した、見事なまでに実用的な建築なのだなぁ~と、感心する。
☆
窓廻りはレトロな銅板葺きで、これぞ看板建築の原型!!
胴蛇腹に水切り瓦を使っている点や、ゑぶり(えぶり)の雨雲など、細部にわたる心いがこれまた憎いねぇ~。
ゑぶりの雨雲とは、秋田の「いぶりがっこ」とは直接関係ない。
また、北海道胆振地方の天気予報のことでもない。(笑)
軒端などの、小口処理している部分のことを「ゑぶり=柄振り板」と言うのである。
このゑぶりは、注意してみているとたくさんの建物に施工されてある。
子供たちが毎日注意して観察することを、地元では「ゑブリディ~」と言うらしい。(うそ)
↑ゑぶりの雨雲(火事よけのおまじない)
ところどころ錆びた金ものが見られるが、これは「折れ釘」というもの。
火事のとき、これに網を掛け火消しがよじ登ったり、壁の補修の際の足場などにも使われるのだ。
☆
他に土蔵造りと似たもので、塗屋造りというものがある。
と、語りだすときりがないので、この辺でやめておきますね。(笑)
【所在地】静岡県賀茂郡松崎町松崎211 グーグルマップ
近藤平三郎生家
白い部分が「はちまき」
銅板葺きの開口廻りと水切り瓦
なまこ壁(四半目地)の拡大。(錆びているのが折れ釘)