Isidora’s Page
建築日誌
■円融寺 岩井堂■    2008年09月08日

今年の春、フィレンツェの大聖堂へのいたずら書きが大いに話題になった。
とある女子短大生が、いたずら書きの名所である大聖堂に、日付と?印とご丁寧に学校名まで記していたとするニュースである。
これを発端に、ぞくぞくと同じケースが発覚した。
みなさん、きついお仕置きを食らったようであるが、高校野球の監督などは解雇されたとも聞く。
なんでも、新婚旅行に出かけた際、記念に夫婦の名前を記したらしいのだが……。
その後、女子短大生は公に謝罪して、逆に「平和大使」にまで任命されるという劇的な展開を見せた。
こうなれば、解雇された野球の監督はちょっと気の毒な気もするなぁ~。(ジーン)
きっと、幸せいっぱいの気分で書いたのに違いないのにねぇ~。(ふむふむ)

さて、なにも文化遺産へのいたずら書きを褒めるわけではないが、いたずら書きそのものはある種の文化遺産である。
しかもこれ、古今東西、世界共通の文化であるから面白い。(笑)
エジプトのピラミッドなどにも、ものすごい数のいたずら書きがあるという。
法隆寺にも、天井裏には多くのいたずら書きがあった。
だれだれが、いつここに来て、どんな作業をしたという証拠にもつながるもので、まれに歴史的に貴重な資料ともなる。
足跡を残す!
まあ、しょせんいたずら書きの域を出ない内容だが、この風習はマンションや公共建築などの現場でも延々と続いている。(笑)

いたずら書きとは違うが、神社仏閣に付きものの一つに「千社札」(せんしゃふだ)というものがある。
これは千社詣のあかしとして、江戸中・後期以降に江戸庶民の間で爆発的に流行したもの。
もともとは「木札」に願掛けをして、神社仏閣に納札したものといわれるが、まあ、時代が進むにつれ持ち運び便利な紙製となり、デザインとファッション性を兼ね備え現在みられる形となった。
最近では、耐水加工を施されたシールなども出回っており、コモモのキャラクターを用いたものまである。
って、これは嘘ですよ~。(笑)
しかしこの千社札、見た目に美しくない、文化財を汚す、マナーがなっていない……などの理由で、昨今は「迷惑行為」とするところも少なくないのだ。

円融寺岩井堂 千社札がたくさん
上の写真、いかがでしょうか?
これを文化とみるか、迷惑とみるか? 価値観が分かれるところである。
あれ?
右上端あたりにマイケル・ジャクソンの千社札が?……
なんてものがあったりしたら、これはこれでお宝になるに違いないのだが。(笑)

円融寺 岩井堂
秩父札所三十四観音、第26番札所。
この岩井堂はもとは本堂と別寺で、第6番札所に位置されていたもの。
巡礼の順路をめぐり、現在の番付は江戸に入ってから定着されたらしい。
建立は江戸中期、宝暦年間(1751~1763)頃。(古建築研究会のHPによる)
まあ、看板には堂々と1205年・鎌倉時代の建立であると明記されているけど。(笑)

これぞ、秩父の清水寺!
と、言われるように、この様式を懸造り(かけづくり)もしくは懸崖造り(けんがいづくり)と言う。
超有名なところでは、鳥取県の三仏寺投入堂や関東では笠森寺が知られている。
急な斜面に建て掛けたもので、長い床束を立て、何重もの足代を組んで構成されたもの。
見た目にはラーメン構造に似ているが、工学的にはちょっと意味合いが違うんだな。
えっ?
ラーメン構造?
まあ、これを説明しだすと長くなる。
写真を見て、こんな形と納得してください。(笑)
清水寺のように、このせり出した部分が特に広いものを舞台造り(ぶたいづくり)ともいうが、この岩井堂は狭すぎて気をつけないと落下する。
いや、却ってこの方が緊張感が増すというものですが。(笑)

本堂からここまで行くには、1.5kmほどの山登りが必要である。
何と石段の数が300有余段!
と言っても、さほど急峻な斜面ではない。
面白いのは、ここへ行くためには、昭和電工の広い工場を抜けて通らなければならないことだ。(笑)
いくら地図を探してもそれらしき登山道がない。
あれ?
「地図だと、確かにこの工場の奥なんだがなぁ~?」
と、工場の守衛室の前をうろうろすること20分間。
守衛さんと目と目が合っているんだが、お互いどうにも切り出せないのだ。(笑)
痺れを切らした守衛さんが 「工場に御用ですか? それとも岩井堂ですか?」
と言ってくれたので、初めてこの奥にそれがあることを確信する。
ゲートの中に入り、フォークリフトの行き来する工場内の舗装道路の隅を通って、横断歩道を渡り、またまた舗装道路の隅を通って、ようやくそれらしき登山道が目に入る。
う~む、こう言うケースは初めてだな~。
それにしても、宗男のいで立ちは工場関係者と間違えるほどのものなのか?
と、ひとり笑い。
さすがに窓口で住所氏名を記入する必要はなかったが、これじゃ、観音堂にいたずら書きなんて、とてもじゃないが残せないなぁ~。
と、ついついフィレンツェの聖堂のことを思い出した。(笑)

【所在地】埼玉県秩父市下影森348 グーグルマップ


円融寺岩井堂 
円融寺岩井堂

円融寺岩井堂
懸造り(懸崖造り)

円融寺岩井堂

円融寺岩井堂
落下しそうな舞台

円融寺岩井堂 
舞台からの絶景(落ちたら上ってこられない)

円融寺岩井堂
舞台の見上げ
円融寺岩井堂
崖の奥には洞窟が……