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建築日誌
■善福寺(品川)■    2008年09月21日

ここは旧東海道、北品川のとあるお寺さん。

善福寺 
一見、妖しい寺である。
いや、二度見ても妖しい寺である。
いやいや、三度見ても妖しい寺である。(笑)
って、この書き出し、何度でも使いまわしできて便利ですね。(笑)

はい! 飛んでまいりました。
品川宿。
うにさま情報によると、「行かれてびっくりするかも?」とのことでしたが。……
はい! びっくりしました!! 
宗男の負けです。(笑)
どうです?
このダメージ・ファッション!
まるで、泉鏡花の『高野聖』にでも出てきそうな荒れ寺風のデザイン!!
って、荒れてるんですよね。(笑)
荒れるのは女性のお肌と暴走族くらいかと思ったら、このお寺さんも相当荒れている。
ん?
いや、世界経済も、日本経済も、自民党総裁選も荒れていますね。
「みんなアレデラ(寺)~!」
なんちゃって。(笑)

善福寺。
安政7年(1860)の建立。
寄せ棟、土蔵造り。
縋る(すがる)破風付き。
左官頭は大野某。
鏝絵・漆喰細工は、伊豆の長八こと入江長八。(今泉善吉との合作?)

このお寺さん、資料によると安政の大地震(1855)で木造の本堂が倒壊し、その後土蔵造りの本殿に建て替えたという。
本堂扉はアルミサッシュに付け替えられているが、亀甲模様の銅板ぶき戸板が残っている。
宗男には、この違和感がたまらない!(笑)
火灯窓(かとうまど)があるところをみると、禅宗のお寺さんだろうか?
中を見られなかったのが、ちょっと残念である。
禅宗様(ぜんしゅうよう)は、別名唐様(からよう)とも言うから、中はからよう~。
なんてことはないと思うのだが。(笑)

築150年近く経っているので、ある程度の損傷はやむを得ない。
し、しかしである!
こんなにアレデラ~! では、ちょっと可哀そうな気がする。
細部を見ると、どれもこれも見事としか言いようのない極上の出来栄えなのだ!
もちろん、この左官細工を施したのは伊豆の長八こと、入江長八。
長八45歳の頃と推定される。
前回の橋戸稲荷神社よりも、こちらの方が1年ほど後に手を付けている。

まず、正面の向拝(ごはい)中心にある「龍」と左右の「狛犬」に目を奪われる。
比較損傷の程度が浅く、現在は金網で保護されている。
あっ、上の写真は、スズメバチの巣じゃありませんよ~。(笑)
普通であれば、木材をノミで丸彫りするのであるが、長八はわずかな木材の芯に漆喰を塗り固める手法をとっている。
これも、損傷の跡から観察できるので、そういう意味では大変貴重なものだ。
正面の虹梁(こうりょう)には「菊水」の図柄。
これは長八の門人、今泉善吉との合作とも伝えられている。
ハトのフン害で憤慨(ふんがい)はなはだしいが(笑)、鏝絵そのものには損傷はなくきれいなものだ。
そして、壁面の小壁(上の壁)に施された鏝絵(こてえ)は、うなぎ絵ならぬ龍の絵である。
左右に描かれてあり、向かって右が「下り龍」、左が「上り龍」……
なのかどうか?
損傷が激しく判別できないほど剥落しているのが残念である。

それにしても、この「上り龍」と「下り龍」。
左右の小壁からはみ出して、向拝中央の小壁の扁額付近にまでその尻尾が踊りだしているのが分かる。
みごとである!
長八、でかしたぞ!!
と、完成当時は世間を騒がせたに違いない。
今ではその全体像は明らかではないが、もし剥がれずに残っていたとしら長八の最高傑作に位置すべくダイナミックな作品である。
これだけのお宝、このまま放置しておくのはもったいない。
ちょっと、厚く塗り過ぎたのかなぁ~?
荒れたお肌にはドモホリンクル!
荒れた鏝絵(こてえ)には効果がないだろうか?
って、女性のお化粧をからかっているのではありませんよ。(笑)
これじゃ「固定(こてえ)資産税」も安くつきます。

【所在地】東京都品川区北品川1丁目28-9  グーグルマップ


善福寺
幽玄とした荒れ模様(ユーゲント・シュティールは別語/笑)

善福寺
お肌ぼろぼろ

善福寺
アルミサッシュと銅板ぶきの戸板

善福寺
「菊水」の鏝絵にハトのフンが……

善福寺 
龍の漆喰細工

善福寺
木鼻に施された「狛犬」(スズメバチの巣ではありません)

善福寺
向かって左の「上り龍」

善福寺
向かって右の「下り龍」

善福寺
小壁の見上げ

善福寺
ちょっと見、アンモナイトの化石

善福寺
「上り龍」の尻尾の拡大

善福寺
「下り龍」の尻尾の拡大、下は「菊水」