ポーの作品に『ウイリアム・ウイルスン』(William Wilson)という短編があるのをご存じだろうか?
ポーと言っても 汽笛がポー♪ のポーではない。?(笑)
ゴルフならば、パー。
林家ならば、ペー。
エドガーならば、ポー。
そう、かのエドガー・アラン・ポーのことである。
☆
主人公のウイリアム・ウイルスンは、幼少期からわがままで、何不自由なく、放蕩にふけり、常に自分中心の生活をしていた。
しかし、一つだけ思い通り行かないことがあった。
それは、何かにつけて自分に逆らう、ある一人の人物が存在したからである。
その人物とは、自分と生年月日が同じで、同姓同名。
しかも服装や風貌、背格好も同じで、顔も自分と瓜二つの人物だった。
加えて、常に自分よりも一歩抜きんでた冷静な人物……
ウイリアム・ウイルスンは、もう一人のウイリアム・ウイルスンの存在に思い悩むが、やがてある悲惨な結末が……
と、この先はネタバレになるのでやめておくが、いわゆるこの小説は「ドッペルゲンゲル」ものの古典的幻想文学である。
どうですか?
お子様の読書感想文提出に、宗男が代行承ります。
謝礼は、要相談!
……って、嘘ですよ。(笑)
☆
さて、なぜに『ウイリアム・ウイルスン』を冒頭へ持ってきたか?
実はこの建物、何と設計者がそのウイリアム・ウイルスンなのである。
これは単なる偶然ではない。
この話には、世にも恐ろしい結末が待っているのだ。……
☆
『日本聖公会川越基督教会』
大正10年(1921)竣工。
煉瓦造、平屋建て。
設計者:ウイリアム・ウイルスン(William Wilson)。
施工者:清水組。
☆
この教会は、通称「蔦の教会」と呼ばれ、御覧の通り外壁が蔦で覆われている。
蔦のからま~るチャペールで~♪
祈りをささげた日ぃ~♪
と、ペギー葉山の「学生時代」のモデルとなったかどうかわからないが、蔦と言えばまずこの教会を想い出す。(いや、地元の人だけですけど)
えっ?
そんな歌知らないって?
はい。
知らない方は、お近くの「ツタヤ」でCDを借りてみてください。(笑)
☆
様式としてはゴシップ様式、いや、ゴシック様式を採用してあり、随所にその特徴を表している。
細長い尖頭アーチ窓に加え、側壁の荷重を支えるバットレス(控え壁)を設けるなど、ゴシック特有の垂直性を強調しているのだ。
こうすると、さほど高い建物でなくても、ずいぶん高く感じられるでしょう。
この垂直性こそ、ゴシップの、いや、ゴシック様式のだいご味なのである。(笑)
また、三角の笠石が、上の方へ↑を向けたデザインにも見えるのが何ともかわいいでしょう。
そう言えば、カンパネルラさんの記事で、世にも珍しい「フライング・バットレス」を備えた弘前のゴシック教会を紹介しているので、参考にどうぞ。→ここ!
(※カンパネルラさん、勝手にリンクさせていただきました)
内部空間にも数々のゴシップ、いや、ゴシックの特徴がみられるが、これ以上ゴシップが出ると怖いので、写真のUPは控えさせていただきます。(笑)
外壁煉瓦は、珍しいフランス積み。
何と壁厚は40㎝前後となる分厚い構造である。
☆
設計者のウイリアム・ウイルスンは、米国人技師で、大正5年(1916)に来日している。
立教大学の礼拝堂をなどを手がけた人物であるようだが、調べてみたがあまり詳しいことは分からなかった。
しかし、面白いことに、川越の本教会を建てる2年前(大正8年)に、熊谷にある「日本聖公会熊谷聖パウロ教会礼拝堂」を設計していることが分かった。
この熊谷の礼拝堂、不思議なことに川越の本教会と瓜二つなのである。
もっとも、熊谷の方には蔦は生えていないようだから、ペギー葉山とは無関係である。(笑)
当時は、複数の建物を同一図面で作成する事例が多かったと言う。
いわゆる、使い回し疑惑である。(笑)
一回の設計で2回分の設計料が取れる。
……なんてことなら、いいのになぁ~。
と、そんな不純な夢を抱いてはいけません。(笑)
☆
それにしてもこの二つ建物、よく似ている。
もしかすると……
川越の教会を設計したウイリアム・ウイルスンは、熊谷の教会を設計したウイリアム・ウイルスンとは別人で……同姓同名、生年月日も同じ、顔も風貌もそっくりの、もう一人のウイリアム・ウイルスンだったのかも知れない。
どうりで、プロフィールを調べてみてもよく分からなかった。
おお!
ドッペルゲンゲル!
あなたはこの事実を、どう受け止めますか?
☆
この世のどこかに、あなたと同姓同名で、生年月日も同じで、顔も風貌もそっくりの、もう一人のあなたがいるかもしれません。
ほら、ダイエット中なのに、いつの間にかキッチンでたこ焼きを食べているもう一人のあなた…(笑)
【所在地】埼玉県川越市松江町2-4-13 グーグルマップ
日本聖公会川越基督教会
細長い尖頭アーチ窓、バットレス(控え壁)などで
ゴシック特有の垂直性を強調
側面
尖頭アーチ窓
三角の笠石が、上の方へ矢印を向けたデザインにも見える
フランス積みの外壁煉瓦