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建築日誌
■民宿 室屋 (旧森卯兵衛商店)■    2009年09月29日

うなぎの蒲焼ってのは、洋食かい? 和食かい?
へいっ! 答えは洋食。
うなぎだけに、養殖うなぎ。(笑)

すいません。(ぺこり)
無理やり古典ネタを持ってくる必要はないんですが。(笑)
さて、洋食ばかり続いたので、たまには和食を……
いや、たまには和風建築をUPします。

『民宿 室屋』 (旧森卯兵衛商店)
※『函館の建築探訪』(函館建築研究会・函館の歴史的風土を守る会編、北海道新聞社/1997)には「森宇兵衛商店」と表記があるが、これは「森卯兵衛商店」の誤記ではないかと思われる。
竣工は明治42年(1909)。
設計・施工:不詳。
木造2F建て。

いかがでしょう?
洋風建築ばかりを見た後って、和風建築がとても素敵に見えませんか?
スザンヌやベッキーを見た後は、山田花子が見たくなる……
いや、ちょっとこれは違いますね。(笑)
とにかく、和風には和風の良さと言うものがあります。
函館の街は、このように和風と洋風が混在したところに、不可思議な驚きと面白みがあるのです。

この建物は、昭和59年(1984)に民宿として再利用されたもの。
元は、海産問屋の森卯兵衛商店。
何と部屋数が、16室もあると言うから驚きである。
洋風のお店が流行る中「これが和風だっ!」と、啖呵を切った店主の心意気には頭が下がる。(笑)
玄関は、4枚引き分けのガラス格子戸。
引き分けと言っても、じゃんけんしているわけではありませんが、こういう形式をそう呼びます。
正面の窓は出格子とならず、1・2階とも縦桟の面格子を付けている。
窓上部には「出桁庇」が取りついて、軒は化粧たる木としてある。
これだけでもう、和風としての品格は満点である!

しかし、妻側は大壁の下見板張りが大半なのでちょっと洋風に見えなくもない。
2Fの窓も額縁の付いた開き窓で、どことなく洋風のテイストが見られる。
屋根の小壁には、あれ? ハーフチンバー?
いや、これは真壁(しんかべ)に小屋ヌキと小屋ヅカを半表しにしたもので、伝統的な和風の手法です。(笑)
1Fは和風、2Fは洋風、屋根部は和風。
まるで、洋風の牛肉を和風のごはんで挟み込んだ、牛肉ライスバーガーのような構造である。(笑)
これが奥へ行けば、だんだんと洋風建築になるから不思議である。
増築されているようだ。
しかも養殖ウナギのように長い。(笑)
う~ん、これだけ広いから16室もあるんですね。
窓も上げ下げ窓(ギロチン窓)で、軒裏にも蛇腹が付いて持ち送りが見られる。
これはまさしく洋風建築だ!
このお店、和ものを扱っていると見せながら、実は裏では洋ものを商いしている……
なんて勘繰りたくなる建物だなぁ~。(笑)

この森卯兵衛商店、調べてみるとなかなか面白い。
いや、そんな暇があったらちゃんと仕事をしなさいっ!
って、怒鳴られそうですね。(笑)
森卯兵衛は大阪の人で、始め東京で商いを見習い、後に函館へ来て海産委託販売業を始める。
明治44年には、中国を相手に塩鱒の輸出を実施し、対中貿易に力を注いだとされる。
大正の後半には日魯(ニチロ)漁業のエージェントとして、塩鮭、マス、スジコ、イクラ、みがきニシン、スルメ、タラ、昆布、小豆……と言った酒好きにはたまらない海産物その他を手広く扱ったようだ。
どうやら当時は「森卯」(もりう)と呼ばれていて、その名も全国的に有名だったらしい。
どんぶり屋に「なか卯」と言うのがあるけれど、あれとは全然違う。(笑)
そう言えば、あがた森卯、いや森魚(もりお)と言うやつがいたが、あれとも関係ない。

森卯商店は、関東大震災後の大正13年(1924)、東京日本橋に「函館森卯商店東京出張所」を出すことになる。
注:大正15年の郵便物を見ると、函館店は「本宅」(仲濱町十三番地)とあり、東京店は「東京森卯兵出張店」(日本橋□本船町五番地)と記されている。函館の住所は旧住所番号で、仲濱町は現在の大町の一部である。旧地図をみると大体現在位置と合致する。
その後新宿に「エビスビアホール」を開き、これが大当たりして昭和の初めには函館から東京へ主力を移す。
そしてどんどん大きくなり、現在の「ニュートーキョー」へと発展するわけである。
そうなんです。
この旧森卯兵衛商店、実は「ニュートーキョー」の前身だったのです。
「ニュートーキョー」はブランド店もいっぱいあり、酒飲みであれば一度は入ったことがあるに違いない。
ちなみに、昭和12年(1937)の数寄屋橋本店の開店では、ビールのつまみに「干しタラ」が付いたそうです。
函館だったら「かんかい」が付いたはずなんだけど。←これ、函館の人にしか分からないかも?(笑)

宗男は居酒屋へ行けば、必ず揚げ物を注文してしまいます。
これがメタボの原因!
一番の好物がてんぷらで、特に鱚(きす)のてんぷらが好きである。
ん?
鱚(きす)のてんぷらは洋食か? 和食か?
はい。
答えは「フレンチ」です。
鱚(きす)だけに、フレンチキッス!
なんちゃってね。(笑)
おしまい!

【所在地】北海道函館市大町9-17 グーグルマップ

室屋 
室屋

室屋
縦桟の面格子となっている正面の窓

室屋

室屋
洋風の妻側・額縁の付いた開き窓の2Fの窓

室屋
奥行きは洋風になっている

室屋 
ギロチン窓、蛇腹が付いた持ち送りのある軒裏

室屋

室屋

室屋