この夏、男ばかり三人で奈良へ行った。
構造屋さん、意匠屋さん、設計・施工屋さんの三人である。
これに設備屋さんが加われば、建築プロジェクトチームの出来上がりである。(笑)
奈良への目的はそれぞれ違う。
構造屋さんは、日頃家族サービスばかりしているので、たまの骨休みが目的。
意匠屋さんは、ゆるキャラ「せんと君」の詳細を観察するのが目的。(笑)
設計・施工屋さんは、ここ秋篠寺所蔵の「伎芸天」の優しいご尊顔を拝するのが目的。
さて、宗男はこの三人のうちどれでしょう?
はい。
もちろん「せんと君」ですね。(笑)
残念ながら「せんと君」の本物にはお会いできませんでしたが、帰りに携帯ストラップを買ってまいりました。
とってもお気に入りです♪
☆
ここの「伎芸天」(ぎげいてん)は、頭部が奈良時代(8世紀)に創られて、お体の方は鎌倉時代(13世紀)に修理されたものだと言う。
大自在天(だいじざいてん)の髪の生え際から生まれたと伝えられ、その名の通り芸能の神様である。
何とも面白いところからお生まれになったと感心するが、ギリシャ神話なんかではもっと面白いところから神様が生まれている。
例えば愛の女神アプロディーテは、切り取られた男根が海に落ちて、その周りに沸き立つ泡から生まれたと聞く。
ん?
変な場所で泡を立てると、変な神様が生まれるかもしれない。
何とも泡てた話であるが、お風呂好きの殿方はご注意ください。(笑)
☆
話が下の方へ移ってしまったので元に戻します。
ここの「伎芸天」は写真撮影お断りなので、残念ながらお見せすることが出来ない。
優しいお顔立ちで、やや左へ傾げた首が何とも優雅である。
日頃、奥さんの怖いお顔ばかり見ているⅠさんは、しばらくここを離れたくないと駄々をこねておりました。(笑)
☆
『秋篠寺本堂』(あきしのでらほんどう)
国宝。
建立は、鎌倉時代前期(12世紀~13世紀)。
明治31年(1898)解体修理。
桁行5間、梁間4間。
軒高3.78m、軒出2.29m。
一重、寄棟屋根、本瓦葺。
☆
さて、「伎芸天」がお見せできないので、本堂の写真をUPいたします。
まずは、TOPの写真から。
いかがでしょう?
この本堂、どことなく唐招提寺金堂に似ていませんか?
唐招提寺金堂は、奈良時代後期(天平後期)を代表する建築で、これを天平様式と呼ぶことがある。
この辺りから平安時代にかけて、それまで朝鮮半島や大陸から移入された建築様式は国風化され、だんだん日本人好みのスタイルに定着していく。
このスタイルを「和様」(わよう)と言って、その後、鎌倉時代に移入される大仏様(天竺様)と禅宗様(唐様)の二様式と区別される。 ←はい。ここ、試験に出るところ。(笑)
もう少し分かりやすく言うと、昔々、西洋のズボンみたいなものが日本に入ってきて、これを日本人好みに使いやすくするため「ももひき」が生まれ、その後ジーパンとジャージーが輸入されたことから、「ももひき」を「和様」と呼んで、ジーパンとジャージーの二つと区別した。
と、言うことである。
いや、ズボンとももひきとの相関関係は確かではありませんが。(笑)
とにかく、秋篠寺本堂は鎌倉時代に建立(こんりゅう)されながらも、そのスタイルは古式ゆかしい「和様」を盛り込んで創られたのだと言いたかったのである。
☆
屋根は寄棟(よせむね)造りで、勾配はかなり緩やかである。(写真TOP、2参照)
寄棟(よせむね)とは、小さい胸を「寄せて上げる」御婦人のあれとは違い、妻側にも屋根が掛かるご覧の形式のこと。(笑)
屋根の一番高くて平らなところを「大棟」(おおむね)と呼ぶが、これも「大胸」(ボイン)と間違わないように注意してください。
このボイン、いや大棟の両側にあるちょんまげみたいなものを「鳥衾」(とりぶすま)、もしくは「鳥休み」と言い、唐招提寺ではここに「しび」が付く。
「しび」とはまたの機会に説明するが、ここには「しび」がないのでどうにも「しびったれ」ています。(笑)
寄棟の四隅の棟を「隅降り」(すみくだり)と言い、降り(くだり)なのでこれを登ると住職に叱られる。
いや、屋根はどこを登っても叱られますね。
危ないですから、絶対やめてくださいね。(笑)
この「隅降り」(すみくだり)、一般には「隅棟」(すみむね)と呼ぶが、下の方は2段になっていて、この小さい方を「稚児棟」(ちごむね)と言う。
小さい胸なので、いや、小さい棟なので稚児の棟だそうで、この先にあるのが鬼がわら。(写真2参照)
この鬼がわらの先にも「鳥衾」が付いており、稚児の棟のくせに大そう立派である。(笑)
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次に軒裏を見てみましょう。(写真3、4参照)
屋根のあばら骨みたない奴を「垂木」(たるき)といい、これが2段になっているので、この形式を「二軒」(ふたのき)と言います。(だんだん、口調が先生みたいになっていきます)
この「垂木」(たるき)、すべて並行にならんでいるので「並行垂木」(へいこうだるき)と呼び、「和様」の大きな特徴を示します。
「唐様」(からよう)は「扇垂木」(おうぎたるき)と言って「隅木」(すみぎ)に向かって扇状に並んでいきます。
ここを見ると、「和様」(わよう)か「唐様」(からよう)かの違いが一目でわかります。 ←はい。ここも試験に出るところ。
お勉強は、遊んで「からよう」なんてことを言ってはいけませんよ。(笑)
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そして「組物」へとまいりましょう。
柱の上にある斗型(ますがた)をしたものと、肘木(ひじき)とを合わせて「斗拱」(ときょう)と言います。(写真5参照)
斗型(ますがた)は、お酒の桝のように四角い形をしたもの。
肘木(ひじき)は「拱」(きょう)とも言い、はげ頭に効く海藻の「ひじき」のことではなく、肘を曲げたような形の部材のことです。(笑)
ちょうど、肘を曲げて、頭と両腕で上の「丸桁」(まるげた)を支えているように見えるでしょう。
「丸桁」(まるげた)は、文字通り頭の断面が丸型をしているのでこう呼ばれ、カクテルの「マルガリータ」とは全く関係ありません。
また、驚いたときに言う「たまげーた」とも関係ありません。(笑)
これは、比較的簡単な形式の「平三斗」(ひらみつど)といい、三つの四角い斗があり、壁から出っ張らないで平(ひら)であるためにこう呼びます。
時代が後になるにつれ、この出っ張りが何段にも重なります。
これを「手先」(てさき)と言って、二つであれば「二手先」(ふたてさき)、三つであれば「三手先」(みてさき)、4つであれば「四手先」(よてさき)……
と言う風にどんどん増えていきます。
この技術は大したもので、小手先(こてさき)ではうまく行きません。(笑)
そう言えば、お酒のつまみの「手羽先」(てばさき)と言うのがありますが、いつの間にか二つ、三つ、四つ……と、どんどん増えていきますね。
あれと同じことです。(笑)
☆
さて、お次は……
と言いたいところですが、皆さんお疲れのようですね。
お勉強はこの辺にして、お酒とおつまみの「手羽先」でも食べましょう。
……なんて、授業だったらいいんですけどね。(笑)
因みに「唐様」との比較は『国宝 正福寺地蔵堂』を参考に。
では、試験までに復習をしておいてくださいね。
って、試験なんてありませんのでご安心を。(笑)
【所在地】奈良県奈良市秋篠町757 グーグルマップ
秋篠寺本堂・写真1
写真2
写真3
写真4
写真5
おまけ・せんと君