高橋洋のフェイスブックより
『映画の生体解剖ビヨンド』カナザワ映画祭のトークでは言及しきれなかったポイント
ポイントその1。『食人大統領アミン』は何故手術シーンから始まり、手術の最中にクーデターが起こるのか? 何か答えがあるわけではない。不可解なことが起こってるのだ。
ポイントその2。『映画の生体解剖ビヨンド』は『アウトレイジ・ビヨンド』から来てるのではなく、もちろんルチオ・フルチの『ビヨンド』から。そして『ビヨンド』はルイジアナ州の沼地から始まる。
ポイントその3。『紳士協定』のこの子役こそが、『映画の生体解剖ビヨンド』の重要人物、ディーン・ストックウェルなのである。宇宙人からクトゥルーとのハーフまで演じられる彼は、額に信頼の印があってもまるで信用ならないのだ。
ポイントその4。『映画の生体解剖ビヨンド』のもう一人の重要人物、ヤフェット・コットーは『ドラム』でも黒人反乱の張本人なんだが、暗がりだとほとんど顔が見えない…。フィルムは白人仕様で作られてる説を思い起こす。
ポイントその5。『映画の生体解剖ビヨンド』作業中の一つの発見。ギラーミン版コングのベースがリック・ベイカーならば、『キングコングの逆襲』のそれは名古屋章なのではないか。
ポイントその6。これも『映画の生体解剖ビヨンド』作業中の発見。"セッシュ"(台に乗せて背を高く見せる)という現場用語が早川雪洲から来ていることはよく知られているが、『戦場にかける橋』では"セッシュ"される早川雪洲が繰り返し映し出される。それも段々高く。
ポイントその7。たぶん『映画の生体解剖ビヨンド』で日本人にとって最も"異物"なショットが『エアフォース』のこれ。戦場の"リアル"とは違う突き刺さり方。ナチの将兵の描写でもこういう感覚ってあるんだろうか?
ポイントその8。そこで『映画の生体解剖ビヨンド』では、『007は二度死ぬ』を白人は映してやらないという排外主義的方針で編集してみたが(ボンドは一応、日本人に変装してることになってるので別)、浮かび上がって来たのはほぼ何もしていない浜美枝だった。
ポイントその9。『映画の生体解剖ビヨンド』の不思議ショット。え、これどうやって撮ったの?と一瞬判らなくなることを『オルフェ』はやっている。恐ろしく緻密で贅沢な仕掛け。
ポイントその10。『映画の生体解剖ビヨンド』第二部のテーマは罪悪なんだが、『コルチャック先生』のカチンコ持ってるナチス女子隊員を見ると、言い知れぬ後ろめたい気分に襲われる。まるでブラック企業に巻き込んでしまったような。
ポイントその11。『映画の生体解剖ビヨンド』を通じて見えて来るのは、俳優は演じているのではなく、本当にこういう人がいるように見える何かを呼び込もうとしていることだ。スターがテレビでの露出を控えたのもこの感覚と関わっている。
ポイントその12。だから『映画の生体解剖ビヨンド』では虐殺シーンを多く取り上げているが、たとえばアボリジニの虐殺を描く時、それが頑張って協力してくれている現地のみなさんに見えてはマズいのだ。これは実に困難な問題だ。
で、ポイントその13。『映画の生体解剖ビヨンド』では結局使わなかったが、『パララックス・ビュー』の"暗殺者適性検査映像"に現れるこの女の顔はなんなのだろうか? 既成の写真のモンタージュっぽいのだが、出所が判らない。
ポイントその14。『映画の生体解剖ビヨンド』が秘かに示唆しているのは、『ダンウィッチの怪』のテーマ曲が「猪木ボンバイエ」に聞こえてしょうがないという謎である。『アリ/ザ・グレーテスト』より『ダンウィッチ』の方が前なんだが…?
ポイントその15。情報部のビッグ・ガッデム・ミステイク! 『映画の生体解剖ビヨンド』が最もフィーチャーしたい台詞の一つである。映画を面白くするのは情報部だ。映画のスタッフ編成にも情報部があればいいのに。もちろん決してクレジットされずに。
ポイントその16。『映画の生体解剖ビヨンド』を編集してつくづく思うのは、本当に力強い芝居は切りようがないことだ。『悪魔の赤ちゃん3』の、マイケル・モリアーティら出演者全員が一丸となったこの芝居とか。