擬態告知

 再   会 


鼻の穴に 真綿を詰めた
白装束
まっ赤なべべに包まれた
赤子を抱いて
坂道を登る――

(苦シクモアリ
      苦シクモナシ)

カサコソ カサコソと
幽かに擦り抜ける
忘れかけていた
嘆息の日々……

「それは、
 私がいけなかったと言うことですか?」

腹立ち紛れに
ナナカマドの実を毟り取る
その果肉の
重たいこと 重たいこと

今年は 何十年振りかの豪雪に
屋根の潰れる家が
二、三軒出るに違いない


大輔はもう中学生になったんだから
ぼちぼち店の手伝いもさせられない
甕に汲んだ水は冷たいので
納屋の隅に
そっと隠しておきました

ワァー と
込み上げる 涙

遠い昔
綿菓子の心棒を握りしめ
真ん丸い背中の中で 眠った
あの 木綿の肌触りは
何処へ行ったのでしょうか?

昨日――
母へお茶を送っておきました
仏壇には
落雁を供えておきました
もう 二十年も便りがないけど
今頃は内地で
大工でもやっているに違いない

「いよいよの時は、
 迎えに来てくれますか?――」


(トテモ ソコマデハ 
         無理 無理……)


隙間風が
ビュービュー唸っています
また
煙突を取り付ける時期が来ましたね
窓にビニールを張るのは
誰の割り当てだったでしょうか?

それだけが
どうしても思い浮かびません


(H13.5.4改稿)


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