擬態告知

  桜 の 古 木  

整形を保たない異端な あなた
この薄桃色な季節のほかに
あなたを
仰ぎ見るものは 誰もいない

一瞬の変成を あなたは
幾百年ものあいだ 反芻してきた
枝垂れること……
言葉による彩りでは 計れない
あなたを あなたは

上へ上へと堕落するものたちへ
腰骨を折り畳んで 祈った
あなた
いま生命の分岐点を予感し
そっと
枕木に手を添える

あなたの その
艶やかさに目を向けられず――

異端である あなたの
あなたは いま
言葉による逃避から身を引き
飴細工の褥に眠る
目に映る隠喩では語れない 
あなたを あなたは……


(H13.5.4改稿)


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