予感された[Z] (Ver.2-00)
P
女は主治医と喧嘩する
姑息な胸像は爪を噛む
午前零時二十五分
神経は 緩慢に凍結する
*
喧嘩のあと
女は主治医に犯される
(――背後から)
三人の子供らは寝返りを打つ
薄汚れた
芝居小屋に降る雪は……
夢は
幸運を齎してくれるだろうか?
Q
歯は 腐る為に起立する
指は 濡れる為に分岐する
毛髪の先で瞳を刺して見るがいい
罫線と螺旋との媾合を
直ちに断罪せよ!
R
潰瘍は厳かに喇叭を吹く
――アン・ドゥ・トゥワ
――アン・ドゥ・トゥワ
決意は内腿から肛門へと移行し
子供らは夜尿を断つだろう
S
嫌いなもの――犬
猫は殺して杏子の下に埋めました
頭取は銀行を喰い潰し
妾たちは野苺を食い残す
乳白色に透き通る
T」
露草に濡れる横隔膜は
余りにも強引過ぎて……
U
冬瓜の芽に浸食される
未来の坊やよ!
産まれる前に お前は
父親の悪癖を罵っただろうか?
湿った褥を呪っただろうか?
(ハハ)
お前の小便は尖っている
V
仰け反った君のアソコは
居並ぶポプラのよう
母親は 雨に晒されながら
藁で尻を拭いてくれました
あの日――
子午線は水平に割裂して
蝙蝠は洞窟に 隠蔽された……
W
一体誰が仲間であったろうか?
蝶ネクタイを緩める
太鼓っ腹の老紳士
指笛に雀躍りする
白肌の歌姫
見兼ねて鉛筆を落としたのは
私の失策でした
X
天蓋は逆剥け!
円環は閉じる道理を知らないから
Y
星空を象った芝居小屋には
狂人と狂人の娘が棲んでいる
(――三人の子供らと)
*
午前四時二十五分
主治医は
静かにゴミを捨てに行く
[Z]
女はきっと
朝寝坊するだろう……
(H13.5.6改稿)
街
再会