Isidora’s Page
  週 刊 広 告 論  

1・鏡 リクルート
2・穿 フォルクスワーゲン
3・闇 へーベルハウス
4・女 ナイキ
5・虐 雪印
6・擬 マンダム
7・薄 サントリー
8・雫 トイズファクトリー
9・完 Z会
10・本 ミサワホーム
11・続 ナショナル
12・詩 小田和正
13・苦 新潮社
14・政 公明党
15・答 ソニー
16・懐 学研
17・測 阪急百貨店
18・夢 ホンダ
19・正 フォスター・プラン
20・貧 日本新聞協会
21・父 ツヴァイ
22・首 サントリー
23・真 味の素
24・寥 日清
25・剰 松下電器
26・裂 全家連ほか
27・P ポラロイド
28・M JASRAC
29・Q キューピー
30・幸 千趣会
31・萬 ANA
32・胎 宝島社
33・美 トヨタ
34・家 三井ホーム
35・蔽 宝塚エデンの園
36・赤 アサヒビール
37・滅 朝日広告賞
38・褐 明治製菓
39・護 GEエジソン生命
40・国 スクウェア
番外編 スイス航空
41・福 福音館書店
42・蜂 山田養蜂社
43・曝 宝島社
44・鴎 ツーカー
45・心 三菱自動車
46・莫 トヨタ&日産
47・人生 セイコー&ファイザー製薬
48・お詫び 明治製菓
49・本物 サントリー
50・ジョニーウオーカー
51・武富士
52・ネスカフェ
53・大日本除蟲菊
54・セブンイレブン
55・日本広告機構
56・キリン・ラガービール
57・缶コーヒー3種

週刊広告論

 番外編 

スイス航空/エスクァイア8月号


※奇しくも勤務先で社内啓蒙用に広告時評を書くハメになり、特に社外秘な内容でもないので番外編としました。あまり斜に構えないように努力したのですが、どうでしょうか。

 今日(6/25)、エア・ドゥがつぶれた。結局大手の価格攻勢などによる圧力に屈した形だ。叩きつぶした上でANAがその経営権を奪ったことになる。それ自体はよくある話なのだが、広告業に関わる人たちの多くは、たぶん別の、複雑な思いを胸に抱いたことだろう。つぶされたエア・ドゥもつぶしたANAも、その両方の広告キャンペーンを佐々木宏が行っていたからだ。どんな強いメッセージも(「AIR DOをつぶせ!」)大きなスローガンも(「空を飛ぼう」)職業的な茶番に過ぎないと言われたら、佐々木宏はどう答えるのだろうか。
 今回僕が見つけてきた広告は、雑誌「エスクァイア」日本版8月号の表3に掲載されていたスイス・インターナショナルエアラインズの企業広告だ。種も仕掛けもない、シンプルな広告に見えるが僕はこれを見て何か狐につままれたような不思議な気分を味わった。
 まず製版屋が適当に切り抜いたようなメインビジュアル。僕にはこれが飛行機の写真であると瞬間わからなかった。もちろん1秒後にはパースを理解したのだが、あまりに雑につくられている感じがするので、まさかトリミングが凝っているとは思わなかったのだ。そうした違和感はまだまだ続く。
 キャッチフレーズは英文で、One of the world's youngest fleets. And getting younger.。日本人がターゲットとは思えない、容赦のない英文で、直訳すると「世界でもっとも若い航空会社のひとつ。そしてもっと若くなる。」という感じだが、これが読めないとエスクァイアの読者でないといわれたら、少なくとも僕にはその資格がない。さらにそのキャッチを受けるリードが「機材:128 平均機齢:5.4 発注済機材:73 就航国:59 就航都市:126 エスプレッソコーヒーメーカー搭載機:26」という訳わからなさ。「機材」が飛行機を意味すると知っている人が何人いるのだろう。そしてそれが分からないと発注済機材の意味が分からず、getting younger(=もっと若くなる)につながらないのだからひどい。「エスプレッソ」のオチも中途半端で、鼻につくマスターカードのpricelessの方がまだ広告的だ。よくみたら書体選択やレイアウトもちっともプロっぽくなくてこれはひどい広告だなと思った瞬間、次の赤い一文がすべてを救う。
「最もスイスな航空会社へようこそ」
 ここだけが直訳調ではなくコピーライターの文章になっている。世界のエスクァイア誌に連動した広告を適当に日本語にしたいい加減なものでないことに、そこで読者は気づく仕掛けだ。DTPっぽいつくりも、うまくない冗談もそれが「最もスイス」だと言われた途端に異国情緒に反転する。それが偶然なのかよく練られたものなのかすら認定できない宙ぶらりんな感じがこの広告の新しい魅力であり、広告年鑑的な広告感をねらい撃つのだ。
スイス航空
エア・ドゥ
ANA